日本大百科全書(ニッポニカ) 「リュウノウジュ」の意味・わかりやすい解説
リュウノウジュ
りゅうのうじゅ / 竜脳樹
[学] Dryobalanops aromatica Gaertn.
フタバガキ科(APG分類:フタバガキ科)の常緑高木。マレー半島、スマトラ、ボルネオに自生し、樹高50メートルを超す大木になるものがある。葉は長さ約10センチメートル、卵円形で先がとがり、肉厚で、枝に互生する。花は枝の先に円錐(えんすい)花序をなしてつき、白色で5弁、芳香がある。果実はほぼ球形で直径約3センチメートル、全体が萼筒(がくとう)で覆われ、萼筒の先は長さ7センチメートルほどの2枚の翼状になっている。
材の周辺部は灰色または淡黄色、心材部は濃赤色で、堅く、家具材や室内装飾用材、船材、枕木(まくらぎ)などにマホガニー材の代用とされる。心材部には竜脳Borneo camphorが含まれ、ときには白い結晶として存在する。竜脳は古くから香料、薬料とされ、主成分はボルネオールである。樹皮に穴をあけたり、材を蒸留してとる竜脳油は、テルペン類を多く含み、眼薬や歯痛薬に用いられる。竜脳は中国には8世紀に伝わり、日本には18世紀までには伝来していた。
[星川清親 2020年11月13日]