日本大百科全書(ニッポニカ) 「レッドフィールド」の意味・わかりやすい解説
レッドフィールド(Robert Redfield)
れっどふぃーるど
Robert Redfield
(1897―1958)
アメリカの人類学者。シカゴ大学法学部卒業後、弁護士になったが、その後、人類学に転向してシカゴ大学大学院に入学。同大学教授、人類学部長、北京(ペキン)の清華大学客員教授などを歴任。メキシコ市に近い村落、テポストランで調査を行い、未開社会とも都市社会ともいえない「民俗社会」という概念を提出して、従来、未開社会の研究や文明間の比較に限られていた人類学の対象領域を拡大した。彼は、民俗社会と都市社会を両極とする連続体を想定し、連続体上を都市社会に進むにつれ、集団のサイズは大きくなり、役割の分化・個人化・世俗化が進行するとして、その著『ユカタンの民俗文化』(1941)でいくつかのコミュニティをこの連続体上に位置づけてみせた。さらに彼は、一つの文明のなかの伝統を「大伝統」と「小伝統」とに分け、知識人・エリートなどで保持されていく都市の伝統を「大伝統」、そしてそれが村落のレベルに浸透する過程で変形・再解釈されたものを「小伝統」とした。主著は前記のほかに『テポストラン――メキシコの一村落』(1930)、『未開社会の変貌(へんぼう)』(1953)、『農民社会と文化』(1956)などがある。
[豊田由貴夫 2019年1月21日]
『染谷臣道・宮本勝訳『未開世界の変貌』(1978・みすず書房)』