アメリカの実験発生学者、生理学者。ドイツで生まれ、ベルリン大学で哲学を、ストラスブール大学で脳脊髄(せきずい)生理学をそれぞれ学んだ。その後ウュルツブルク大学などで助手として生理学の研究に携わった。1891年アメリカに渡り、シカゴ大学、カリフォルニア大学の生理学教授を歴任し、ロックフェラー研究所の所員となった。生物の示す現象を物理化学的な面から実験的に解析するという立場からの研究は広範な分野に及んでいる。動物の走性、再生現象、無機イオン類の生理学的意義からタンパク質の物理化学まで優れた研究を行ったが、そのなかでも著名な仕事は、ウニの未受精卵を化学物質を溶かした海水に浸すことにより発生を開始させた実験で、当時の生気論と機械論の論争の渦中に大きな石を投じたものであった。物理化学的な実験を進めると同時に、生物を一つの統一体としてとらえることの重要さを説いた。主著に、『脳の比較生理学と比較心理学』(1900)、『生きているものの動的活動』(1906)、『生物学的エッセイ 生命の機械論的概念』(1912)、『人工処女生殖と受精』(1913)、『一つの全体としての生物体』(1916)などがある。
[竹内重夫]
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…現実の自然界において,生物とくに多くの動物は,上述のような走性によって,食物,異性,その他,彼らの生存に必要な対象を手に入れることが可能になっている。それと同時に,動物の行動がすべて走性ないしは走性の積重ねで説明できると考えるのはまったく誤りで,かつて走性をくわしく研究したJ.ロイブは,人間の恋愛をも走性の一種とみなしたが,これはナンセンスである。行動【日高 敏隆】。…
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