日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロジッキー石」の意味・わかりやすい解説
ロジッキー石
ろじっきーせき
rosickýite
自然硫黄(いおう)の第三の変態鉱物。γ-硫黄(ガンマいおう)ともいう。α(アルファ)、β(ベータ)相とともに自然硫黄群を形成。等方に近い立体でb軸方向に厚板状。あるいは菱形(ひしがた)の断面をもつ短柱状。まれに細柱状あるいは両錐(すい)状をなす。火山噴気孔周辺に生成される。また粘土岩中に生成された中空の針鉄鉱の団塊の内部に産する。空気中で徐々にα-硫黄に転移する。火山噴気孔中のものは、イタリアのリパリ諸島ブルカノVulcano火山から、粘土岩中のものはチェコのレトビツェLetovice付近から発見されている。ほかにアメリカ・カリフォルニア州ベントゥーラVenturaのリンコン岬Point Rinconでも頁岩(けつがん)中に昇華物として産出が知られている。日本では産出は未報告である。
共存鉱物は粘土鉱物、針鉄鉱など。同定は淡黄から無色、わずかに緑色を帯びることもある。放置するとα相に転移するため不透明感が増す。光沢はα相が樹脂光沢であるのに対し、金剛光沢を呈する。命名はチェコスロバキア(現、チェコ共和国)、ブルノのマサリク大学岩石鉱物学研究室前主任ボイチェック・ロジッキーVojtěch Rosický(1880―1942)にちなむ。
[加藤 昭]