(1)バラードやビルレーvirelaiと並んで中世フランスの詩と音楽における重要な形式。13~15世紀に発展したが,その前段階を指してロンデルスrondellus(ラテン語)ということもある。輪舞のことをロンドronde(フランス語)というように,もともと輪になって踊りながら歌われたものと考えられ,リフレイン(折返し句)の回帰を特徴とする。最初期の6行詩型では独唱者が歌い出す楽句に合唱部(リフレイン)が応答する形をとっていたが,13世紀末から14世紀にはリフレインで始まる8行詩が典型となる。その構造はABaAabABと表される(大文字はリフレイン部,文字の大小を問わず同じアルファベットは同じ旋律,同じ大文字以外は歌詞の違いを表す)。その後行数は増加し,15世紀には21行にも達する。詩の多くはフランス語で宮廷的な愛を主題としているが,宗教的な内容のものもある。13世紀のものはまだ単旋律で,その詩は《薔薇物語》などの物語文学に挿入されていた。13世紀末になると多声ロンドーが登場するが,その最初の作曲家の一人に,トルベールのアダン・ド・ラ・アルがいる。14世紀アルス・ノバの時代にはマショー,15世紀ではブルゴーニュ楽派のデュファイやバンショア,初期フランドル楽派のオケヘムらが多数の作品を残している。ロンドーは15世紀に最盛期を迎えたが,やがてもっと自由な形式の多声部シャンソン(シャンソン)が好まれるようになり,16世紀にはすたれた。
(2)17~18世紀フランスのリフレイン形式による楽曲。クラブサン音楽をはじめオペラやバレエなど,声楽・器楽を問わずさまざまなジャンルで用いられた。ABACADA……A(Aをリフレインまたはロンドーといい,その他をクープレcoupletまたはエピソードépisodeという)のように,多数のクープレをもつのが特徴。中世のロンドーとの関係は不明である。17世紀ではリュリがオペラのアリアやバレエ音楽でもしばしば使用したが,とくに流行したのはクラブサン音楽においてである。18世紀前半ではF.クープランやラモーらに代表される。世紀中葉までにはヨーロッパ中で流行したが,やがてクープレの数が整理され,ロンド形式に発展していった。
→ロンド形式
執筆者:土田 英三郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
元来輪になって踊った舞踏に添えて歌われたロンデ・ド・カロールrondet de caroleに発し、13~15世紀に流行し、19世紀まで続いた詩形式である。語源はrotundus(ラテン語)にさかのぼり、rond(丸い)>rondel>rondeauと変わった。ロンデ・ド・カロールの形式
(大文字は繰返句(ルフラン)、小文字は同一脚韻を示す)にさらに繰返句ABを詩の冒頭に置けばロンドーの古典的な形式トリオレtrioletが得られた。
歌唱ではa=独唱、A=合唱、ab=独唱、AB=合唱となっていた。最古の例は13世紀初頭のジャン・ルナールJean Renartの物語『ばら物語 別名ギヨーム・ド・ドル』Roman de la Rose ou Guillaume de Dole(1228?)に挿入された詩にみられる。その後、詩人、音楽家のマショーGuillaume de Machaut(1300ころ―77)、デシャンらによって完成され、ロンドー・ドゥーブレrondeau doublé、ロンドー・ルドゥーブレrondeau redoubléなどの変種を生む。主題は初期の民謡風から宮廷風恋愛、宗教的主題に及び、狭い世界ながら機知とコケットリーを得意とした。楽曲のロンド形式とは無関係である。
[神澤榮三]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… 14世紀には,フランスとイタリアを中心に,2~3声の世俗歌が数多く生み出された。フランスでは,トルベールによって確立されたバラード,ビルレー,ロンドーrondeauの,詩と音楽の形式が継承発展させられた。代表的な詩人兼作曲家としてマショーが挙げられる。…
※「ロンドー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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