一定の脚韻構成を備えたいくつかの連(れん)からなる韻文詩をいう。同じ韻律のパターンの繰り返しにより、詩の格調を高め、意味を効果的にする利点があり、近代詩では広く用いられてきた。現代詩人のフロストは「自由詩はネットを使わないでテニスをするようなものだ。韻律の価値はテニスにおけるネットと同じで、それを使ったほうがはるかに楽しい」と、定型詩を弁護している。
定型詩の種類は、律格meterの種類や歩脚footの数、それに脚韻構成によって、さまざまな名称があるが、その主要なものは以下のとおりである。俳句と違って、英詩の定型は一行では成立しないので、最低の単位は二行連または対句coupletである。この行末で脚韻を踏む二行連は、それだけで独立して格言や警句に用いられたり、またはいくつも繰り返されて使われたりする。その場合、弱強五歩格iambic pentameterで構成されているときは、とくに「英雄対句(ついく)」とよばれて「英雄詩」に広く用いられる。17世紀から18世紀にかけてドライデン、ポープ、ジョンソンなどに愛用された。フランスでは十二音節詩句(アレクサンドラン)の二行連が古典主義詩の基調で、コルネイユ、ラシーヌ、モリエールなどに愛用された。三行連tripletにも、さまざまな脚韻の組合せがあるが、そのうちaba bcb cdcと踏んでいく詩型をとくに「テルツァ・リーマ」terza rimaとよんで、ダンテが『神曲』でこれを使ったことは有名である。英詩でもシェリーの『西風に寄せる頌歌(しょうか)』やT・S・エリオットの『リトル・ギディング』第二部に用いられている。
英詩でもっとも基本的な詩型は「四行連」quatrainで、その律格と脚韻の組合せに従って、さまざまな名称がついている。もっともよく用いられる形は、弱強四歩格iambic tetrameterと弱強三歩格iambic trimeterが交互に並び、ababまたは×a×aと脚韻を踏む「普通律」common meterである。これは一般の叙情詩や賛美歌などによく用いられ、またバラードに用いられることから「バラード調」ballad meterともよばれる。このほかは、「五行連」「六行連」と限りなくあるが、詩型としては十四行詩のソネットが広く使われている。これには2種類あって、ペトラルカが用いた弱強五歩格で、abba abba cde cdeの脚韻構成は「イタリア式ソネット」または「ペトラルカ風ソネット」とよばれる。もう一つの弱強五歩格で、abab cdcd efef ggの脚韻構成は「イギリス式ソネット」または「シェークスピア風ソネット」とよばれる。前者は、前半の二つの四行連が提示部で、後半の二つの三行連が展開部となり、起承転結が論理的である。それに対して後者は、前半が三つの四行連からなり、自由奔放に連想を重ねたあげく、最後の二行連で帰結をつけるという特徴がある。
[新倉俊一]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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