改訂新版 世界大百科事典 「わきが」の意味・わかりやすい解説
わきが
smell of armpit
医学的には腋臭(えきしゆう)症bromhidrosisという。わきの下(腋窩(えきか))のアポクリン腺から分泌された汗が,特有の強いにおいを発する状態をいう。アポクリン腺から分泌される汗は,中性脂肪,脂肪酸,コレステロールなどを含み,分泌直後の汗には悪臭はないが,皮膚表面の細菌により分解されて低級脂肪酸を生じてにおいを発するようになると考えられている。汗の量と細菌の量によって,においの程度には個人差があるが,遺伝傾向があり,耳あかが軟らかい体質と相関があると考えられている。また,アポクリン腺の機能の変動と関係があるため,思春期ころから明りょうとなり,青壮年時代にわたって持続し,中年を過ぎると軽くなる。人種的にも差があり,日本人はにおいに対し比較的潔癖なためか,病気として治療をうけるが,欧米人とくに黒人などはあまり意識せず,病気として治療をうけることが少ないといわれている。実際に,どの程度から異常であるのかを決定するのは困難である。また,わきがであると思いこんでいる人の中には,正常範囲と考えられる人があり,ときには心配がこうじてノイローゼ状態になっている人や,極端な場合にはまれではあるが妄想の一つのこともある(自己臭症)。予防と治療としては,まず毎日入浴し,下着の着替えを頻繁にし,また,わきの下の汗をよくふいて,清潔と乾燥を保つようにつとめる。程度の軽い場合には,制汗剤と抗生物質の入ったスプレー,ローション,軟膏などを,局所にまめに使うようにすれば,においは軽くなる。外用薬による治療で,うまくコントロールできない場合には,わきの下の抜毛とともに,アポクリン腺を破壊する電気分解法を行うが,手間がかかり,効果がやや不確実である。程度が強い場合には,手術が考慮されるが,わきの下の毛のある部分を,アポクリン腺が存在する深さまで切り取り,縫い合わせる単純な手術法では,相当に大きい傷あとが残る欠点がある。そのため,手術のあとがなるべく目だたないような種々の手術方法が考案されている。
→汗
執筆者:藤澤 龍一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報