ムベ(読み)むべ

改訂新版 世界大百科事典 「ムベ」の意味・わかりやすい解説

ムベ
Stauntonia hexaphylla (Thunb.) Decne.

大きな果実をつけるアケビ科のつる性木本。常緑なのでトキワアケビの名もある。葉は互生し,3~7枚の小葉からなる掌状複葉。小葉は楕円形倒卵形。春,総状花序に白い花をつける。花は単性,雌雄同株萼片6枚,花弁はなく,雄花では6本のおしべが花糸のところでくっついている。その内側に退化しためしべが3本ある。雌花では3本のめしべの外側に退化したおしべがある。めしべには多数の胚珠が入っている。果実は紅紫色に熟すがアケビのようには開かない。関東以西,沖縄諸島,朝鮮半島南部,台湾に分布する。中国,台湾にムベ属Stauntonia約10種が分布している。果実は食用になるほか,茎や根にはスタウントニンを含み,強心剤,利尿薬として用いられる。生垣樹や生花材として利用される。

 ムベ属に近縁なパルバチア属Parvatia,ホルボエリア属Hollboeliaが中国~ヒマラヤに分布している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ムベ」の意味・わかりやすい解説

ムベ
むべ / 野木瓜
[学] Stauntonia hexaphylla (Thunb.) Decne.

アケビ科(APG分類:アケビ科)の常緑藤本(とうほん)(つる植物)。トキワアケビ、ウベともいう。葉は互生し、3~7小葉からなる掌状複葉。托葉(たくよう)はない。雌雄同株。4~5月、総状花序をつくり、単性の白色花を3~7個開く。萼片(がくへん)は6枚で半開する。花弁はなく、雄花は6本の雄しべが花糸の部分で合着する。雌花は6本の仮雄蕊(かゆうずい)と3枚の心皮がある。果実は大きく、紅紫色に熟すが、裂開しない。中に黒くつやのある種子が多数ある。山野に普通に生え、関東地方以西の本州から沖縄、および朝鮮半島、台湾に分布する。果肉は甘く食用となり、根、茎は利尿薬とする。樹は生け垣盆栽に用いることがある。

[寺林 進 2019年9月17日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ムベ」の意味・わかりやすい解説

ムベ(郁子)
ムベ
Stauntonia hexaphylla

アケビ科の常緑のつる植物で,トキワアケビまたはウベともいう。本州中南部から台湾の暖地の山地に生え,庭木としても植えられる。葉は5~7枚の楕円形の小葉から成る掌状複葉で,長い柄があって互生する。小葉も柄をもち全縁で,平滑な革質で3本の主脈が目立つ。若い葉は3枚の小葉から成ることが多い。雌雄同株で,初夏,葉腋から雄花と雌花の花序を別々につける。花は花弁を欠き,紅紫色を帯びた萼片が6枚ある。雄花は雌花より小型で数も多く,退化しためしべがある。雌花には3個の子房と不稔のおしべがある。果実は卵円形で紫色の液果でアケビに似ているが熟しても裂開しない。果肉は甘い。

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百科事典マイペディア 「ムベ」の意味・わかりやすい解説

ムベ

トキワアケビとも。アケビ科の常緑つる植物。本州(関東以西)〜沖縄,東アジアの山地にはえる。茎は木質で,葉は柄が長く,革質長楕円形の小葉5〜7枚からなる。雌雄同株。4〜5月,葉腋から総状花序を出し,雄花を3〜7個雌花をそれより少なくつける。花は白色で淡紫色を帯び,萼片(がくへん)は6枚,花弁はない。果実は卵円形で紫色に熟し,アケビとちがって開裂しない。果肉は食べられる。

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