アスペルガー症候群(読み)アスペルガーショウコウグン(英語表記)Asperger syndrome

デジタル大辞泉 「アスペルガー症候群」の意味・読み・例文・類語

アスペルガー‐しょうこうぐん〔‐シヤウコウグン〕【アスペルガー症候群】

広汎性発達障害一種知的障害言語障害を伴わないで、対人関係への無関心、同一動作の繰り返しなど自閉症症状を示すものをさす。オーストリアの小児科医アスペルガー(Hans Asperger[1906~1980])がこの症例を初めて報告AS(Asperger syndrome)。→自閉スペクトラム症

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知恵蔵 「アスペルガー症候群」の解説

アスペルガー症候群

発達障害の一類型。知的障害あるいは言語コミュニケーションの障害を伴わない自閉症を指し、しばしば高機能自閉症と同じ意味で用いられる。しかし、精神疾患として定義されたのが1980年代と、比較的新しいため、いまはまだ分類・定義が明確に定まっているとは言えない。2005年に施行された発達障害者支援法のなかでは、第2条で「『発達障害』とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されており、自閉症とは区別されている。
アメリカ精神医学会が作成した『DSM-IV-TR 精神疾患の分類と診断手引』に収載されている診断基準は次のとおり。(1)対人的相互反応の質的な障害、(2)行動、興味および活動の、限定的、反復的、常同的な様式、(3)社会的、職業的、その他の領域における機能の著しい障害、(4)著しい言語の遅れがない、(5)認知の発達、年齢相応の自己管理能力、対人関係以外の適応行動小児期における環境への好奇心において明らかな遅れがない、(6)他の発達障害、統合失調症の基準を満たさない。
当事者は社会的に困難を抱えながらも、知的障害がなく、一般的なコミュニケーション場面では一見して障害とわかりにくい。そのため、1990年代には障害の一種として知られていたにもかかわらず、福祉行政の対象になり得ていなかった。発達障害者支援法は、地域ごとに発達障害者支援センターを開設することや、乳幼児期から成人期まで地域で一貫して支援を受けられる体制をつくること、医療や福祉的支援の専門家を確保し当事者や家族を含めた関係者の連携をとることなどを盛り込んでいる。支援法の施行により、医師の診断に基づいて精神障害者保健福祉手帳を取得することが可能となり、精神障害者枠で就労することもできるようになった。

(石川れい子  ライター / 2010年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

六訂版 家庭医学大全科 「アスペルガー症候群」の解説

アスペルガー症候群
アスペルガーしょうこうぐん
Asperger syndrome
(こころの病気)

 アスペルガー症候群の特徴は、①相互的な社会関係とコミュニケーションをもちにくい、②関心と活動が限局し常同的であること、です。この特徴はいずれも自閉症と共通するところから、自閉症のひとつと考えられます。いいかえれば、自閉症のなかで、知的障害を伴わなず、言葉を使うことができるものが、アスペルガー症候群と考えられています。しかし、両者の境界は必ずしも明確でなく、その神経学的な背景の違いについてもまだ不明な点が多く残されています。

 アスペルガー症候群の人は、難しい言葉や表現を用いることができますが、意味理解は限定されており、違った意味で用いられるとわからなくなってしまいます。他の人の気持ちを想像することが難しいので、相手や場面にふさわしい言葉遣いをすることが苦手です。一方的に自分の知っていることを話し続けることもよくあります。

 日常生活では決まった手順やスケジュールを守ります。たとえば虫のこと、乗り物のことなど、興味があることには熱中し、極めて詳しい知識をもっていたり、技能を発揮したりすることがあります。

 アスペルガー症候群への対応は、前述の「広汎性発達障害」に触れたとおりです。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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