日本大百科全書(ニッポニカ) 「アセトフェノン」の意味・わかりやすい解説
アセトフェノン
あせとふぇのん
acetophenone
芳香族ケトンの一つ。メチルフェニルケトン、アセチルベンゼンともいう。天然にはラブダナム油やウミダヌキ香に含まれている。
ベンゼンと塩化アセチルとのフリーデル‐クラフツ反応により合成する。天然物から分離するには、蒸留したのち結晶化させる。独特の甘い芳香をもつ無色の液体で、冷却すると固化する。水にはほとんど溶けないが、エタノール(エチルアルコール)、エーテルなどの有機溶媒にはよく溶ける。濃硫酸と接触させると橙黄(とうこう)色となる。アルカリとハロゲンを反応させるとハロホルムCHX3(Xはハロゲン)と安息香酸C6H5COOHを生成する(ハロホルム反応)。香料製造の原料に用いられる。以前はヒプノンの名で催眠剤に用いた。
[廣田 穰]