化学辞典 第2版 「アセト酢酸エチル」の解説
アセト酢酸エチル
アセトサクサンエチル
ethyl acetoacetate
C6H10O3(130.14).CH3COCH2COOC2H5.酢酸エチルにナトリウムを作用させて蒸留するか,エタノールとジケテンから酸塩基触媒の存在下で合成される.
CH3COCH2COOC2H5CH3C(OH)=CHCOOC2H5
代表的なβ-ケト酸エステルで,ケト形とエノール形の互変異性体からなり,その割合は新しく蒸留したもので,それぞれ92.3% および7.7% である.無色で,果実様の芳香をもつ液体.凝固点-45 ℃,沸点181 ℃,74 ℃(1.8 kPa).1.0282.1.42092.ケト形はエタノール中-78 ℃ に冷却すると得られ,その性質は沸点40~41 ℃(0.26 kPa),凝固点-39 ℃.1.4225.水に難溶,有機溶媒に易溶.塩化鉄(Ⅲ)で紫色を呈する.ケトン試薬とは通常の反応をするが,ヒドラゾンなどはさらに反応が進行してピラゾロン誘導体を与える.ナトリウムを作用させるとエノール形のナトリウム塩CH3C(ONa)=CHCOOC2H5となり,これにハロゲン化アルキルを作用させるとケト形のアルキル置換体にかわる.この操作を繰り返して得られる二置換C-アルキル体を,希薄な塩基あるいは酸と加熱すると,分解していろいろなケトンを与える(ケトン分解).これは有用なケトンの合成法になっている.また,強塩基と加熱すると酢酸と脂肪酸を与える.これもβ-ケト酸エステルに共通の反応である(酸分解).これを利用して種々の脂肪酸が合成できる.種々の有機合成,アゾ染料などの出発物質,また解熱剤,抗マラリア剤の製造や塗料用溶剤,種々のフレーバー(香料)などに用いられる.LD50 3950 mg/kg(ラット,経口).[CAS 141-97-9]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報