内服剤(読み)ナイフクザイ

病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版 「内服剤」の解説

内服剤

内服剤の長所と欠点


 内服剤は口から飲む剤型の薬で、内用薬内服薬経口剤けいこうざいともいいます。


 薬の大半は内服剤で、口から胃を通り、腸で成分が吸収され、肝臓の解毒作用を受けてから血液に入り、病気をおこしている器官まで運ばれて効果を発揮します。


 内服剤は、飲み方が簡単、いったん胃腸や肝臓で処理されるために作用が緩やかで副作用が少ない、有効時間が長く続く保存性がよいといった長所があります。


 しかし、いったん胃腸や肝臓で処理されるために薬効が低下する、胃腸や肝臓のはたらきには個人差があるため一定した効果が得られない、効果の出る時間が遅く緊急の場合には適さない、薬によっては胃腸や肝臓に障害を招きかねないといった欠点もあります。


内服剤のいろいろ


 内服剤にはいろいろな剤型があり、その薬の効果を最大限に引き出すため、また副作用をできるだけ防止するために、いろいろな剤型が工夫されています。


散剤さんざい粉薬こなぐすり)】



 散剤はいわゆる粉薬で、味が悪くて飲みにくい、錠剤・カプセル剤より保存性が悪いといった理由から、以前よりは使用頻度が減少しています。


 しかし、高齢者や小児にとっては錠剤・カプセル剤より飲み込みやすい、錠剤・カプセル剤よりも吸収が速く効果が確実、患者の症状に応じて薬の量をきめ細かくコントロールできる、消化管の中で薬が分散しやすいので胃腸への刺激が少ないといった長所もあり、状況に応じて使用されています。


散剤のじょうずな使用法


①あらかじめ口に水を含んでおいてから散剤を飲むと、むせたり飛散することがない。


②味や臭いが強すぎて飲みにくい場合は、オブラートかカプセルに入れると、服用しやすくなる。


③固まってしまったり、湿っぽくなったり、変色したような場合には、薬剤師に相談してから飲むようにする。


④変質しやすいので、高温で湿気の多い場所や、光の当たる場所には置かない。


顆粒剤かりゅうざい



 顆粒剤は粒状に加工した薬で、流動性がよいので飲みやすく、飛散したり、口の中や包装紙に付着するといった散剤の欠点もなく、保存性にもすぐれた剤型です。また、胃で溶けずに腸に入ってから溶ける腸溶性の製剤もあり、それは胃への負担が少なく、胃腸薬などに比較的多く使用されています。


顆粒剤のじょうずな使用法


①腸に入ってから十分に効果を発揮させるためには、コップ1杯(200㏄)ぐらいの水で飲むことが大切。


②胃の障害を防止するために腸で溶けるようにしてあったり、また、苦味や異臭を感じさせないために顆粒表面をコーティングしてあるので、んだりつぶしたりしない。


【ドライシロップ剤】



 ドライシロップ剤は保存性をよくするためにシロップ剤から水分をとり除いて粒状にしたもので、服用時に水で溶いたり、かき混ぜたりして使います。錠剤やカプセル剤では飲み込みにくい乳児や幼児のためにつくられた剤型で、おもに抗生物質に利用されています。


ドライシロップ剤のじょうずな使用法


①1回分の量の薬に適量の水を加えて溶かし、よくかき混ぜて飲む(水で、そのまま飲んでもよい)。


②ほかの散剤と混ぜて飲まないこと。混ぜると効力が低下することがある。


冷蔵庫のような低温・低湿度の場所に保管し、有効期限を過ぎた薬は使用しない。


錠剤じょうざい



 錠剤は、原材料を圧縮して一定の形状(主として円形)に加工した薬です。外用剤や注射剤と同じ作用をするように工夫されたものもあり、種類も多く、もっとも利用されている剤型です。


 錠剤には、服用量を正確に保つことができる、服用・保存・携帯に便利、製法を工夫して薬効が自由にコントロールできる、大量生産ができるといった長所があります。


 錠剤は、目的によって種類が異なり、それぞれ使用法が違うので注意してください。


内服錠ないふくじょう 内服することによって全身に効果を現すようにつくられたもので、錠剤のほとんどは内服錠です。この中には、砂糖や合成樹脂などで錠剤の表面をコートし、薬効の持続や副作用の防止、目的とする臓器への集中化などをはかった剤型もあります。


口腔錠こうくうじょう 舌の下に入れておく舌下錠ぜっかじょうや、あめのようにしゃぶるトローチ錠があります。舌下錠は、口腔の粘膜から吸収させるもので、胃腸で分解されては困る薬に用いる剤型です。舌下錠は狭心症の治療などに、トローチ錠(本来は外用剤)は口腔粘膜の炎症や感染の治療などに用いられています。


発泡錠はっぽうじょう 酸とアルカリ剤を加えて泡が出るようにつくられたもので、水や分泌液と反応して発泡し、溶けて作用します。内服用と外用とがあり、外用は腟錠ちつじょうとして局所の殺菌・消炎・避妊などの目的に使用されます。


試薬錠しやくじょう 検査に用いる錠剤で、検査時に溶かして試験に応用する特殊な錠剤です。


錠剤のじょうずな使用法


①効果を発揮させるためには、十分な水(コップ1杯の水)で服用することが大切。とくに高齢者は胃腸のはたらきが弱くなっているので、必ず水で服用する。


②噛んだりつぶしたりすると、薬効や味が変わったり、副作用をおこすことがあるので、そのままの形で飲む。ただし、割線かっせんの入っている薬は、線に沿って割ってもよい。


③決められた錠数を、決められた時間に、指示された時間間隔で飲むこと。


④口腔錠は、必ず口の中で溶けるまでしゃぶる。服用の直後に飲食やうがいなどをすると効果が落ちるので、食後30分から2時間以内に使用するとよい。1日4回のときは、最後の服用は就寝前にする。


⑤舌下錠は冷所(冷蔵庫など)に保管し、使用期限切れの薬や保存の悪い薬は捨てる。


【カプセル剤】



 カプセル剤は、ゼラチンを材料にしたからの中に薬(散剤など)をつめたものです。


 使用目的は錠剤とほぼ同じですが、錠剤にすると製造するときの圧力で分解して効果が低下する薬や、飲みにくい味や刺激を防止しなければならない薬、錠剤として固められない油状の薬などにも応用されています。


 ただ、錠剤に比べて原材料のゼラチンが高価、吸湿し変化を受けやすい、高齢者には飲みにくいといった問題点もあります。


カプセル剤のじょうずな使用法


①口腔や食道に付着しやすいので、必ず水(コップ1杯の水)で飲むこと。水を使わずに飲んでしまったため、カプセル剤が食道に付着し、炎症や潰瘍かいようをおこしたケース報告されている。


②カプセル剤は、湿気、熱、衝撃などに弱いので、保管や取り扱いには十分注意する。


③カプセル剤は、絶対に開封して使用しないこと。開封して使用すると、副作用や苦味や悪臭などがある。んだり、つぶしたりしても、同様の結果となる。


内用液剤ないようえきざい水剤すいざい)】



 内用液剤は、薬を水やアルコールで溶かしたり懸濁けんだくした(乳液のようにした)液状の薬で、主に小児用の薬に使われる剤型です。


 大人用では、鎮咳ちんがい去痰剤きょたんざいに使われます。


 散剤や錠剤などに比べて吸収がよく効果が速い、薬が水で薄められているため副作用が少ないといった長所があるので、乳幼児や高齢者に向いています。


 しかし、変化をおこしやすいため、長期に使う薬には向きません。


 また、味や臭いが強い薬では不快で使用しにくく、持ち運びも不便なことなどから、応用範囲が限られています。


内用液剤のじょうずな使用法


①使用する前に容器をよく振って混ぜ、別の容器(計量カップや湯飲みなど)に目盛り通りに取ってから飲む。容器から直接飲むと、指示量より飲みすぎる危険がある。


②使用後は、ふたをよく閉めて冷所(冷蔵庫など)に保管し、使用期限を過ぎたものは絶対に使用しない。


内服剤の服用時間と回数


服用時間


 内服剤は、服用する時間が「食前」「食間」「食後」というように、食事と関連づけて指定されていることが多いものです。


 食後では効果の現れ方が遅くなるように思われがちですが、いつ飲んでも効果に大差のない薬もあれば、逆に食後に飲んだほうが効果が速く現れる薬もあります。服用時間は、このような点を配慮して決められているのですから、正しく守ってください。


食 前》「食事をとる30分前に服用してください」という意味です。


 薬によっては、食後に服用すると、食べたものや胃酸(食後は胃酸の分泌が盛ん)と反応して効果が低下してしまうものがあります。こうした薬が食前服用となります。漢方薬、食欲増進剤、整腸剤鎮吐剤ちんとざい、狭心症治療剤、抗結核剤のリファンピシンなどが、食前服用と指定されるおもな薬です。


食 間》 朝食と昼食の間というように、「食事と食事の間の空腹時に飲んでください」という意味で、食事をしている途中ではありません。食後2時間ぐらいたってから飲むというのが正しい服用のしかたです。


 薬の効果を速く現したい場合や確実にしたい場合に指示されることが多く、解熱鎮痛剤げねつちんつうざい、強心剤、制酸剤などが代表です。ただ、胃腸がじょうぶな人には、食後服用の薬を食間服用と指示することもあります。


食 後》「食事をしてから30分後に服用してください」という意味です。


 胃腸障害をおこしやすい薬、飲み忘れては困る薬の場合に指示されることが多く、抗炎症剤、解熱鎮痛剤など、数多くの内服剤の服用法です。


 また、胃腸障害がとくに強く現れやすい解熱鎮痛剤などの場合は、食事中や食後すぐの服用のこともあります。


1日の服用回数


 内服剤には、服用回数が1日何回と指定されているものがあります。


1日1回服用》 徐放剤じょほうざいという、効果が24時間以上続く薬剤も開発されていて、1日1回の服用ですみます。慢性の心臓病やアレルギー性疾患に、徐放剤が使われるケースが増えてきています。


 また、痛み、嘔吐おうと、下痢、便秘、不眠などの症状を一時的におさえようとするときの薬も、1日1回になるのが原則です。鎮痛剤、下剤、睡眠剤、鎮吐剤などがそうです。


 1日1回の服用の場合は、起床時、朝食時、夕食時、就寝前、24時間ごと、乗り物に乗る前などと、服用時間も指示されるのがふつうですから、指示を正しく守ってください。


1日2回服用》 1日3回の定期的な薬の服用ができない人や飲み忘れたりしがちな人には、1日2回服用の薬のほうが便利なことから、この服用法の薬も増えています。


 朝夕、朝昼、昼夕、12時間ごとなどと、服用する間隔が指示されます。とくに服用時間の指定がないときは、食事をしてから30分後に服用します。


1日3回服用》 1日3食という生活のパターンに合っていて飲み忘れを防ぎやすいこと、薬の吸収と排泄はいせつの関連から効果の持続時間が4~6時間の薬が多いこと、昼間の服用に便利なことなどから、ほとんどの内服剤が1日3回の服用です。


 しかし、生活(とくに食生活)パターンが変化し、1日3回の服用を守りにくい人が増えてきているため、今後は1日1~2回の服用の薬が主流になるかもしれません。


1日4回服用》 おもに化学療法剤の服用パターンで、6時間ごと(毎食後と就寝前というように)の服用時間が指定されます。


 消化性潰瘍治療剤しょうかせいかいようちりょうざいは、以前は毎食後1日3回の服用でしたが、就寝前にもう1回服用したほうが効果が高いといわれ、1日4回服用と指示されるケースが増えています。


1日6回服用》 重い感染症の治療薬や制酸剤など、効果の持続時間の短い薬に用いられる服用法で、毎食前と毎食後、または4時間ごとというように服用時間が指定されます。


隔日服用》 1日服用したら、次の日は休むという服用法です。いっきに服用を中止すると病状が悪化するため、徐々に服用量と回数を減らしていかなければならない副腎皮質ふくじんひしつホルモン剤などの薬に用いられる服用法です。


 また、現在服用している薬をほかの薬に切り替えるために、徐々に服用法を変えなければならない場合にも用いられます。


週2~3回服用》 腎不全じんふぜんや肝障害があるため、薬の代謝がよくない人に用いられる特殊な服用法です。


 ときに、利尿剤りにょうざいやビタミンD剤に、この方法が用いられることがあります。


内服剤の効果を高めるために


十分な量の水で服用する


 水で服用しなかったために、カプセル剤や錠剤が食道に付着して食道潰瘍が発生したり、胃腸内で溶けずに便といっしょに排泄されてしまうケースがあります。


 また、50㏄の水で内服剤を服用した場合と、200㏄の水で服用した場合を比較してみたところ、後者のほうが、体内での薬の利用率が2倍高かったという報告もあります。


 内服剤は、必ず200㏄(約コップ1杯)の水で飲むようにしましょう。薬が胃腸内でよく溶けて確実に効果があがるようになるばかりでなく、薬が水で薄められるために、副作用がおこりにくくなるのです。


内服剤を飲み忘れたときは


 決められた服用時間からそれほど時間がたっていなければ、すぐ服用してください。しかし、服用時間からかなり時間がたってしまい、次の服用時間のほうが近い場合には、次の服用時間に1回分を服用してください。


 飲み忘れたからといって、2回分をいちどに飲むと思わぬ副作用や事故をおこすことがあります。忘れたことはしかたがないので、次回から正しく服用するようにしてください。

出典 病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版について 情報

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