アナフィラキシーショック

  • (アレルギー疾患)
  • Anaphylactic shock
  • アナフィラキシーショック Anaphylactic Shock

知恵蔵の解説

外部からアレルゲンが体内に入ることで急激に引き起こされる全身性の強いアレルギー反応のためにショック状態になること。ハチに刺されたり、特定の食物を口にしたり、あるいは薬物の投与、ラテックス(ゴム)との接触などが原因となる。アレルゲン摂取後、呼吸困難や意識障害といった症状が現れたらすぐにアドレナリンを筋肉注射する必要があり、処置が遅れると早い場合で15分ほどで死亡することもある。
アレルギー性鼻炎や気管支ぜんそくなどと同じI型アレルギーの一種で、症状が呼吸器や皮膚など限られた範囲ではなく、全身に現れるものをアナフィラキシー(anaphylaxis)という。特に過剰な免疫反応により血管が拡張して血漿(けっしょう)成分が漏れ出て血圧の低下やむくみ、意識消失などがみられるものを「アナフィラキシーショック」と呼び区別する場合もあるが、「アナフィラキシー」が同義で使われることも多い。
ショックを起こしてから1~2時間以内の死亡例では、むくみで気道が塞がれ窒息に至ったことが直接の死因であることが多い。
症状が起こるのは、すでに1度は原因物質が体内に入ったことがありIgE抗体を持っている場合に限られる。また、同じアレルゲンに抗体を持つ人の間でも症状の出方はそれぞれ違い、誰もが2度目の摂取、接触でショックを起こすわけではない。
アレルギー反応テストによりショックを起こすリスクの高い原因物質が分かっている場合には、それを避けることが最も大切な予防策となる。また、ショックを起こした後の処置は一刻を争うことから、リスクの高い人には自己注射用のアドレナリン(エピペン)が処方されるので、これを常に携帯する必要がある。エピペンは1本が1回分で、太ももに注射する。
文部科学省では以前より学校でのアレルギー対策を進めてきたが、2012年12月、給食が原因でアナフィラキシーショックを起こし小学校児童が死亡したのを受け、ガイドラインを新たに作り直し、学校教職員がエピペンを使えるよう指導を徹底することとなった。

(石川れい子 ライター/2015年)

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

食事や薬剤投与などが原因で、じんましん腹痛、呼吸困難といった複数の症状が同時かつ急激に現れるアレルギー反応。死に至ることもある。全国の公立学校を対象にした昨年の文部科学省調査によると、食物アレルギーのある子は全体の4.5%にあたる約45万人にのぼり、うち約5万人にアナフィラキシーの経験があるとされた。

(2014-05-29 朝日新聞 朝刊 阪神 1地方)

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家庭医学館の解説

[どんな病気か]
 アナフィラキシーショックは、Ⅰ型アレルギー反応(免疫のしくみとはたらきの「アレルギー反応」のⅠ型アレルギー)によっておこる、もっとも激烈(げきれつ)な症状を示す状態です。
 Ⅰ型アレルギー反応による病気は、その反応が気道(きどう)でおこれば気管支(きかんし)ぜんそく、鼻でおこればアレルギー性鼻炎(せいびえん)と、患部が限定される病気が大半を占めます。
 しかし、アナフィラキシーショックでは、全身的な症状が、しかも短時間のうちにおこるのが特徴です。
 原因となるのは、おもに注射による薬物で、ペニシリンやセフェム系などの抗生物質、解熱鎮痛薬(げねつちんつうやく)、破傷風(はしょうふう)やジフテリアなどの抗血清(こうけっせい)(解毒薬)、ヨード造影剤(ぞうえいざい)などがあげられます。
 しかし、注射による薬物でなくても、まれにですが、内服剤や点眼薬でおこることがあります。
 そのほか、アレルギー皮膚反応や減感作療法(げんかんさりょうほう)(だんだんと原因物質にならしてアレルギーを改善する治療法)に使うアレルゲンエキス、ハチの毒、そば、エビ、魚貝類などの食物によってもおこります。
 ただ、やはり、もっとも注意を要するのは薬物なので、アトピー体質の人は、抗生物質などの薬物の使用を受ける場合は、必ず医師に申し出ることが必要です。
[症状]
 口や手足のしびれ、じんま疹(しん)、冷や汗などで始まり、しだいに脈が非常に弱くなり、血圧が急激に低下するのが特徴です。
 そのまま放置すると、呼吸困難、チアノーゼ(動脈血の酸素不足のため皮膚や粘膜(ねんまく)が青白くなる反応)、意識を失うといった激烈な反応が現われます。
 こうした病変の進行は非常に速く、治療が遅れると死亡することもあります。そのため、以上のような症状があれば、迅速(じんそく)な診断と治療が必要です。
[治療]
 意識障害や血圧低下などをともなうアナフィラキシーショックをおこした場合は、救急処置が必要です。
 ショックは注射によっておこりやすく、注射後数分でおこる場合がほとんどなので、病院内にいれば、ただちに処置できますが、内服剤などが原因で家などでおこった場合は、すぐに救急車を呼ぶなどして、病院に向かってください。
 家族がつきそえる場合は、頭に向かう血液の量を増やすように、頭を低くして、両足を上げた姿勢をとらせてください。
 病院では、エピネフリン(アドレナリン)の皮下注射、点滴、血圧を上げる薬やステロイド(副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン)薬の注射などを行ないます。
 こうした処置が速やかにできた場合は、比較的短時間で自然に治っていきます。しかし、手遅れになると生命の危険が出てくるため、ショックに対しては、ともかく迅速で確実な処置をとるよう、医療側も厳重な注意をしています。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

即時型(型)アレルギー反応によって生じる全身性アナフィラキシーのうち、激しい全身症状を伴ってショック状態になったもの。[編集部]

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六訂版 家庭医学大全科の解説

アナフィラキシーとは

 リチェットとポーチャーによりアナフィラキシー(anaphylaxis)という概念が提唱されました。「イソギンチャクの触手に含まれる毒素をイヌに注射し、2~3週後に同じ毒素を再び注射すると、動物は嘔吐、出血性下痢などのショック症状を示し、しばしば死亡した」とあります。

 このような現象は、免疫とは反対の意味をもつ現象であると考えられ、防護状態(-phylaxis)とは反対(ana-)の状態という意味で、アナフィラキシー(ana-phylaxis)と命名されました。最も重篤な状態がショックであるので、アナフィラキシーとアナフィラキシーショックは同義語のように使われています。

 臨床的には、特定の起因物質により引き起こされた全身性のアレルギー反応を指します。主にⅠ型アレルギー反応(IgE抗体を介する)によるものと、IgE抗体を介さず起因物質が直接種々の化学伝達物質を遊離、活性化することにより引き起こされるものとに大別できます。

症状の現れ方

 アナフィラキシーショックは基本的には、血管が拡張し血漿(けっしょう)成分がもれ出ることによります。それに加えて、他のショックと異なり、気道の平滑筋(へいかつきん)が収縮したり気道のむくみを起こしたり、分泌物が増加することによる閉塞、血管運動性のむくみ、じんま疹などのI型アレルギーの症状が現れます。

①初期症状あるいは自覚症状

 前駆症状は、口内異常感、口唇のしびれ、のどが詰まった感じ、嚥下(えんげ)困難感、両手足末端のしびれ、心悸亢進、悪心(おしん)、耳鳴、めまい、胸部不快感、目の前が暗くなった感じ、虚脱感(きょだつかん)、四肢の冷感、腹痛、尿意、便意などです。

②他覚症状

 初期の他覚症状としては、くしゃみ、反射性(せき)発作、約半数に皮膚紅潮、じんま疹、まぶたや口唇のむくみなどが認められます。さらに急激な血圧低下、循環不全に伴う意識障害、あるいは気道が狭くなることによる呼吸困難、チアノーゼが現れます。時に、気道狭窄(きょうさく)による窒息(ちっそく)が主症状となることもあります。

経過と対応

 アナフィラキシーの治療は1分1秒を争うので、薬物の服用後やハチ類の刺傷を受けたあとなどに皮膚症状、鼻咽頭症状があれば、ただちに病院へ受診します。アナフィラキシーの多くは、異種蛋白、薬物などを非経口的(注射)に生体内に取り込んだ時に起こりやすいのですが、原因物質に強く感作(かんさ)されている場合では、経口、経皮、あるいは気管から原因物質が入れば起こりうるとされています。

 アナフィラキシー症状の出現時間は、個体の感作状態、原因アレルゲンまたは起因物質の量、投与経路によって異なります。典型的な全身性アナフィラキシーの場合、アレルゲンまたは起因物質の注射後5~10分以内に始まりますが、最も早い場合は30秒以内に始まるので、注意を要します。

 原則として症状の発現が早い場合は重篤で、遅いと軽い傾向にありますが、症状が進行性であることもしばしばです。なお、症状の発現まで30分以上かかることはまれです。

治療の方法

 アナフィラキシーショックは発症が非常に急激で、かつ気道の閉塞を伴います。それによる死亡は初期の1~2時間に起こり、多くは喉頭のむくみや不整脈による心停止などが原因です。さらに重篤な酸素欠乏症と血圧低下によっても起こります。したがって、治療の目的は呼吸と循環を緊急に改善することです。

 まずは気道の確保と酸素吸入が重要で、それから輸液および薬剤を投与するための静脈確保が行われます。

予防のために

 アナフィラキシーは予防が最も大切であり、薬物の投与時には、過去のアレルギー疾患歴や薬物に対する反応性などを十分知っておくことが重要です。アレルギー症状(アナフィラキシー症状)の既往歴があれば、その薬を再使用されないよう自己管理をしっかりすべきです。

相良 博典

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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