北フランスのアミアンにある大聖堂。盛期ゴシックの頂点に位置する建築で,規模はフランスのゴシック大聖堂中最大(全長145m,身廊高42.3m)。身廊,袖廊とも3廊式。大部分は1220-70年ころ建設。建築家としてロベール・ド・リュザルシュRobert de Luzarches,トマ・ド・コルモンThomas de Cormont,その子ルノーRenaud de Cormontの3人の名が残る。左右非対称の西正面双塔は,14世紀末(南側)と15世紀(北側)に完成。ゴシック大聖堂はしばしば〈石の聖書〉とたとえられるが,この大聖堂を飾る彫刻・浮彫群も,文字の読めない民衆に聖書物語を伝えるものであった。中央扉口のタンパン彫刻《最後の審判》下の中央柱には〈美しき神〉と呼ばれるキリスト像が置かれ,端正で均整のとれたこの像はゴシック彫刻の傑作とされる。ここでは,ロマネスク彫刻の超越的な神の姿は人間的で慈愛にあふれる姿に変わっており,自然主義的表現の台頭がみられる。向かって右扉口の中央柱には幼児キリストを抱いたマリア像が立ち,周囲の側壁,タンパンには受胎告知から戴冠にいたるマリアの生涯が表現されている。左扉口中央柱に彫られたフィルマンFirmin(最初のアミアン司教,のち聖人)の右手を挙げて民衆を祝福する像は,力と優しさに満ちたもの。左扉口最下部の腰石を飾る《12ヵ月の暦》(浮彫)には,黄道十二宮の象徴とともに,これに対応する毎月の労働が写実的に描かれ,当時の民衆の姿を伝える。袖廊南側扉口の〈黄金の聖母〉(当時は黄金色に彩色)は,首をかすかに傾けて幼児キリストに微笑を送り,腰をわずかにひねり,弾力的な動きを見せる。これは,13世紀中ごろのゴシック彫刻に現れるバロック的傾向を示すもの。内部は,アーケード,明り窓を開けたトリフォリウムtriforium,高窓と3層構成をなし,高さ20mにも及ぶアーケードと天井の尖頭アーチとが上昇感をあおる。天井全体が四分リブ・ボールトで覆われ,それを支える束ね柱とともに,堂内空間に統一感を与えている。
執筆者:馬杉 宗夫
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フランスのアミアンにあるノートル・ダム大聖堂。ゴシック教会建築を代表し、最大の規模を誇る。面積約7700平方メートル、容積約20万立方メートル、奥行145メートル、身廊の幅14.6メートル、高さ42.3メートル、側廊の幅8.65メートル。前時代のロマネスク様式の教会が1218年の火災で破損したのち、司教ド・フイヨワ時代の1220年にロベール・ド・リュザルシュの設計で再建が始められ、引き続き1288年までトマ・ド・コルモンと息子のルノーが監督にあたった。身廊、西正面とその扉口の彫刻は1236年に、内陣は1269年に、周歩廊と放射状礼拝堂は1247年に完成した。西正面南北の塔は14世紀後半から15世紀初頭に完成。西正面の三つの扉口および南翼廊の扉口には、13世紀の傑作とたたえられる『美しき神』をはじめとするみごとな彫刻群がある。なお、この聖堂は1981年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。
[名取四郎]
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北フランスの司教座都市アミアンにある大聖堂。その大半は1220~70年頃に建てられ,非対称の二つの塔は14~15世紀に完成した。ゴシック建築の代表例の一つで,フランスの大聖堂のなかでは最大の規模である。世界遺産に登録されている。
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…ついでフランス・ゴシック様式の正系を大規模に適用して,シュトラスブルク(身廊13世紀後半),ケルン(内陣部1248‐1322),プラハ(1344‐)の大聖堂が建設された。ケルン大聖堂は完成は19世紀であるが,アミアン大聖堂を範として,さらにゴシック建築法を極限までおし進めている。しかし14世紀以降,ドイツ・ゴシック様式は独自な発展をする。…
…フランスの修復建築家,建築史家,建築理論家。パリ生れ。エコール・デ・ボザール(国立美術学校)を忌避して独学で建築を学び,文化財保護技監であったP.メリメに認められてベズレーのラ・マドレーヌ教会の修理に当たった。ついで老練の建築家ラッシュスJean‐Baptiste Lassusとともに,1845年よりパリのノートル・ダム大聖堂の修復工事を担当してその地位を固めた。その後,文化財保護委員会委員,宗務省の建築技監として活躍し,シャルトル,ランス,アミアンなどの大聖堂やカルカソンヌ市の城壁,ピエールフォン城(ナポレオン3世の命による)などの修復に当たった。…
※「アミアン大聖堂」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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