ノートル・ダム大聖堂(読み)のーとるだむだいせいどう(英語表記)Cathédrale Notre-Dame de Paris

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ノートル・ダム大聖堂」の意味・わかりやすい解説

ノートル・ダム大聖堂
のーとるだむだいせいどう
Cathédrale Notre-Dame de Paris

パリシテ島に建つ聖母(ノートル・ダム)に捧(ささ)げられた大聖堂。パリの最初のカテドラル司教座をもった聖堂)は5世紀のサンテティエンヌ聖堂で、7世紀初頭には同じ場所に聖母に捧げられた聖堂が建った。現在の大聖堂は1163年に司教モーリス・ド・シュリ指揮のもとに新たにゴシック様式で着工されたものである。内陣部は1182年に仕上がって献堂式が行われ、身廊と翼廊部は1200年までに、翼廊部の拡張工事と西正面玄関の外壁面は1250年までに完成した。14世紀初頭には内陣部の諸祭堂が完成して、堂内奥行が130メートルの壮大な五廊式聖堂となった。身廊部は幅が12メートル、天井の高さは35メートルで、両側壁面は列柱を経てトリフォリウム、高窓の均衡のとれた美しい三層構成となっている。また正面玄関の幅は41メートル、左右の塔の高さは63メートルである。17世紀末には内部の改造が、1771年には西正面外壁の改築が行われ、フランス革命期の1793年にはとくに外壁を飾る彫刻群が大破壊を受けた。19世紀にラシュスやビオレ・ル・デュクおよび彫刻家ジョッフロア・デショームによる大修復がなされて今日に至っている。

 西正面玄関部の彫刻は、3個の扉口上部のタンパン(半月形壁面)の浮彫りだけがオリジナルで、扉口左右にせり出した人像柱(スタテュ・コロンヌ)は19世紀の修復による。中央扉口のタンパンは「最後の審判」を表し、左右のタンパンはそれぞれ聖母および聖母の母である聖アンナに捧げられている。扉口上部の「王のギャラリー」の28体の『旧約聖書』の王たちの彫像も19世紀の復原によるが、フランス革命期に破壊された彫像の断片が1977年に発見された。南翼廊部の扉口は聖エティエンヌ(ステパノ)に捧げられ、北翼廊部の扉口は「回廊の門」とよばれて、それぞれ13世紀中ごろのタンパン浮彫りをもつが、北の扉口にはフランス革命の破壊を免れた唯一の彫像の「聖母子像」がみられる。13世紀に制作されたステンド・グラスのうち、今日残るのは西正面のバラ窓(直径9.60メートル)、南北翼廊の2個のバラ窓(直径13メートル)を飾るステンド・グラスだけである。さらに北翼廊のバラ窓はほぼ完璧(かんぺき)な保存状態にあるが、ほかは19世紀の大幅な修復を受けている。なお、この大聖堂のあるパリのセーヌ川河岸は1991年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。

[名取四郎]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ノートル・ダム大聖堂」の意味・わかりやすい解説

ノートル・ダム大聖堂[パリ]
ノートル・ダムだいせいどう[パリ]
La Cathédrale Notre-Dame, Paris

フランスのパリ市内シテ島にあるゴシック建築を代表する大聖堂の一つ。すでに同名の聖堂は 365年にあったといわれるが,今日のような建築として着工されたのは 1163年 M.シュリー司教の指導によってである。 82年内陣献堂,ファサードは 1260年,塔は 50年完成,その後 13世紀を通じて何回かの増設や補修があって今日の姿となった。全長 130m,幅 48m,高さ (塔) 69mの大建築で,特にファサードの3つの入口とその入口の名にちなんだモチーフによって施された彫刻,その上のユダヤ王にちなんだ彫像が並ぶ「王のギャラリー」,直径 10mに近い大ばら窓,その上に細い列柱のギャラリー,さらに左右の塔というこのノートル・ダム大聖堂の構成は,ゴシック建築の典型としてのちの聖堂建築の一つの規準になった。また内部は,側廊が2層になり,身廊は巨大な円柱が先端で3本の束ね柱に分れながら天井へと延びて,全体として非常に明るく高い空間をつくりだしている。荘厳な宗教的空間を演出するステンドグラスは,北正面のばら窓を除いて,すべて後世の作品である。

ノートル・ダム大聖堂[サンリス]
ノートルダムだいせいどう[サンリス]

「サンリス大聖堂」のページをご覧ください。

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