アミロペクチン
あみろぺくちん
amylopectin
デンプンの主成分で、可溶性のアミロースを除いた難溶部分。高等植物に存在し、デンプンの70~80%を占める。糯米(もちごめ)のデンプンはすべてアミロペクチンからなり、アミロースを含まない。無味、無臭の白色粉末で、水に溶けにくいが、熱水には溶けて糊(のり)状となる。デンプンを熱水に溶かしたものにブチルアルコールを加えると、アミロースだけが沈殿するので、アミロペクチンを分離できる。また、アミロペクチンの水溶液にヨウ素を加えると赤紫色になる。これはアミロペクチンの検出に利用される。
アミロペクチンはグルコースがα-1・4-結合で25~30個つながった鎖が基本となる構造で、分岐が多く複雑な構造を示す。1本の鎖に別の鎖が木の枝分れのように結合し、枝分れの鎖にさらに別の鎖が結合するといったようになる。枝分れの結合はα-1・6-結合である。アミロペクチンはアミラーゼやフォスフォリラーゼによって分解されるが、枝分れのα-1・6-結合を分解できないので、切れ残りの部分が残る。これを限界デキストリンという。枝分れの結合は、イソアミラーゼやプルラナーゼ(限界デキストリナーゼ)などの枝切り酵素によって加水分解される。
[村松 喬]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
アミロペクチン
アミロペクチン
amylopectin
アミロースとともにデンプンの成分をなす多糖で,α-(1→4)結合のグルコース残基約25個に1個の割合でα-(1→6)結合の分枝構造をもつ樹状になっており,ヨウ素で赤紫色(λmax 540 nm)を呈する.平均重合度1000~37000.通常のデンプンの約75~80% を占め,アミロースを除いた上澄み液にアルコールを加えて沈殿させる.
約+196°.酸浸漬,酸化などの処理をしたアミロペクチンは30~35% の濃いのりをつくることが可能で,透明性がよく,流動性がすぐれ,ゲル化しない.β-アミラーゼにより約60% が麦芽糖に加水分解され,グルコース残基2~3個の枝を残したβ-限界デキストリンが残る.α-アミラーゼでは重合度7程度の分枝オリゴ糖を生じる.プディングミックス,サラダドレッシング,缶詰,冷凍食品,洗濯用のり,染色用のり,サイジング,接着剤などに用いられる.[CAS 9037-22-3]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
アミロペクチン
amylopectin
デンプン粒の水に溶けない外側の部分を構成する多糖類の一種。化学式 (C6H10O5)n・H2O 。 1,4 -グリコシド結合のほかに 1,6 -グリコシド結合による分岐構造をもつ。アミロースとともにデンプン組成の主成分で,多くのデンプンで 70~80%を占める。分子量は数十万で,ヨウ素デンプン反応は赤紫色である。
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出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
アミロペクチン(amylopectin)
でんぷん粒を構成する主成分の一。グルコースの鎖が複雑に分枝・結合したもの。もち米には特に多く含まれ、沃素を加えると赤紫色となる。
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アミロペクチン
グルコースがα1→4結合で重合した高分子の一部のグルコースがさらにα1→6結合で分枝した構造をもつ高分子.分枝鎖デンプン.
出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報
世界大百科事典内のアミロペクチンの言及
【消化】より
…糖質やペプチドの最終的な消化はここで行われ,この特殊な空間に出た最終消化産物は同じ細胞膜に備わった,濃度こう配に逆らって行われる強力な能動輸送によって,速やかに細胞内にとり込まれる。
[糖質の消化]
食物中の炭水化物の大部分はデンプンであるが,デンプンにはブドウ糖がα‐1,4グルコシド結合のみで多数重合した直鎖構造のアミロースと,α‐1,4グルコシド結合のほかに数%の割でα‐1,6グルコシド結合を含む樹枝状構造のアミロペクチンの2種が混在する。唾液中のアミラーゼ(プチアリン)はα型であり,α‐1,4グルコシド結合を加水分解して低分子のデキストリンを産生し,最終的にはマルトース(麦芽糖)にまで分解する。…
【デンプン(澱粉)】より
…精製されたデンプンは白色の粉末で無味,無臭である。デンプンはアミロースamyloseとアミロペクチンamylopectinの二つの成分からなる。アミロースはグルコースがα‐1,4結合で重合した直鎖の分子で,分子量は数千から数十万に及ぶ。…
※「アミロペクチン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報