改訂新版 世界大百科事典 「アラクチェーエフ」の意味・わかりやすい解説
アラクチェーエフ
Aleksei Andreevich Arakcheev
生没年:1769-1834
ロシアの軍人,政治家。性格は冷淡で暗かったが,非常な努力家。優れた砲兵士官として頭角を現し,アレクサンドル1世に重用されて軍事行政に敏腕を振るった。1808年,陸軍大臣。〈対フランス戦争はすべて予の采配になった〉と豪語したが,戦略上の彼の影響力は大きくはなかった。ナポレオン戦争後の国家財政再建のため,アレクサンドル1世は自給自足のばら色の屯田制を着想し,この立案を彼に託した。16年から実施され,最高時には40万人の兵士と家族とを擁し,全陸軍の3分の1を包含したという。軍隊の維持費の削減,新兵補充の円滑化,老兵の生活の安定を標榜したが,過酷な実施方法のため,兵士たちの怨嗟(えんさ)の的となった。この約10年間を〈アラクチェーエフ時代〉という。頻発した屯田兵の反乱はデカブリストの乱の遠因となった。彼はとくに優れた政治理念の持主ではなかったが,誠心誠意帝意にこたえようとした専制の操り人形であった。
執筆者:山本 俊朗
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報