日本大百科全書(ニッポニカ) 「アラメ」の意味・わかりやすい解説
アラメ
あらめ / 荒布
sea oak
[学] Eisenia bicyclis Setchell.
褐藻植物、チガイソ科の海藻。古名は滑海藻、黒菜など。暗褐色で、下方に1本の茎があり、茎の上端は二またに分岐して、それぞれに十数枚の革膜質の細長い葉片をつけ、全体形では大形のはたき状を呈する。葉片は両縁に不定形の側葉片を出し、葉面には縦走するしわがある。全長1~3メートルにもなる大形の多年生藻。温海性で、太平洋岸では岩手県南部の大船渡(おおふなと)湾以南から宮崎県北部まで、九州西岸、鳥取県以西の日本海沿岸にも産する。ホンダワラ類、カジメなどと藻場(もば)を形成し、沿岸水産物の資源保全に役だっている。古くから食用として利用され、現在ではアルギン酸の原料として活用されている。
平安中期に編纂(へんさん)された『延喜式(えんぎしき)』(927完成)には、滑海藻という名がよく出るが、これをアラメとするのが通説である。現今のアラメは、どこの産でも食用にされるといわれるが、多くは幼体を食用とし、成体は硬いため食用としていない。しかし、駿河(するが)湾西岸から和歌山県の潮岬(しおのみさき)西側までに産するアラメは、成体も柔らかいため、古くから食用にされており、他地区産よりも美味である。昔から静岡県の御前崎周辺産のサガラメ(相良布)は有名で、体形も北アメリカや南アメリカに産するエイセニア・アルボレアEisenia arboreaによく似ている。なお、日本海中北部方面で「アラメ」とよんで成体も食用にしている海藻は、アラメとは別属種のツルアラメである。
[新崎盛敏]