アリドオシ(英語表記)Damnacanthus indicus Gaertn.fil.

改訂新版 世界大百科事典 「アリドオシ」の意味・わかりやすい解説

アリドオシ
Damnacanthus indicus Gaertn.fil.

暖帯山地木陰に生えるアカネ科の常緑小低木。名前はアリをも刺し通すほどの鋭い針をもつことによる。枝は二叉(にさ)状分枝をする。葉は対生で卵円形,大小の2型があり1節ごとに交互につく。大きい葉をもつ節の葉間托葉の腋(えき)から刺針が出る。花は5月に咲き4数性。花冠は筒状漏斗形,白色,長さ1cm強。子房下位で4室,各室に1胚珠が頂生し下垂する。果実球形の液果で,冬に赤く熟し一部は翌春まで残る。日本から中国南部に分布し,葉の大きさや形に変異が多い。センリョウマンリョウとともに植え,〈千両万両有通し〉と縁起をかつぐ。漢方で,全植物体あるいは根を利用する。東アジアに数種が知られており,ニセジュズネノキD.major Sieb.et Zucc.はアリドオシに似て刺針は短く葉が長い。ナガバジュズネノキD.macrophyllus Sieb.ex Miq.は葉が長く根がしばしば数珠状にふくらむため,この名がある。刺針と小さい葉が著しく退化し,1節ごとにしか葉がないようにみえる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アリドオシ」の意味・わかりやすい解説

アリドオシ
ありどおし / 蟻通
[学] Damnacanthus indicus Gaertn.

アカネ科(APG分類:アカネ科)の常緑小低木。高さ30~60センチメートル。枝は規則的に二又状に分枝する。対生葉は大小の2形があり、1節ごとに大小を繰り返す。大きい葉をつける節の托葉(たくよう)のわきから刺針(ししん)が出る。花は5月に開き、4数性で白色。子房は4室、各室に一つの胚珠(はいしゅ)が頂生する。果実は冬に赤く熟し、翌春まで残る。日本から中国南部にかけて分布し、山地の木陰に生える。名はアリをも刺し通すほどの細く鋭い針をもつことによる。センリョウ、マンリョウとともに植え、「千両万両有通し」と縁起をかつぐ。アリドオシ属は東アジアに約10種分布するが、多くの特異な形態をもっており、属の類縁はよくわかっていない。

福岡誠行 2021年5月21日]

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百科事典マイペディア 「アリドオシ」の意味・わかりやすい解説

アリドオシ

アカネ科の常緑小低木。関東〜九州東南アジアの山地の樹林下にはえる。葉は対生し,長さ6〜12mm,広卵形〜広楕円形で革質をなし濃緑色光沢がある。葉の付け根には葉とほぼ同長の針がある。初夏,枝先や葉の付け根に1〜2個の白花を開く。花冠の先は4裂し,おしべは4個。果実は球形で5〜7mmあり赤熟し,翌年5月ごろまで木に残る。庭木にする。近縁種のジュズネノキは葉がやや大型で,針が葉の長さの半分以下。

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