アロキサン

化学辞典 第2版 「アロキサン」の解説

アロキサン
アロキサン
alloxan

2,4,5,6(1H,3H)-pyrimidinetetrone.C4H2N2O4(142.08).メソオキサリル尿素ともいう.メソシュウ酸の環式ウレイドにあたる.尿酸,またはバルビツル酸を,硝酸で酸化すると得られる.四水和物は無色の斜方柱状晶で,風解して一水和物となり,150 ℃ 以上で無水和物となり,170 ℃ で分解する.無水和物(アセトンまたは氷酢酸より)は柱状晶.分解点230 ℃(赤変),融点256 ℃(分解).Ka 2.3×10-7(25 ℃).水,エタノールに可溶.鉄(Ⅲ)塩は濃青色を呈する.一連の環式ウレイド誘導体の合成原料となる.冷時還元によってアロキサンチンを,熱時ではジアルル酸を,濃硫酸と加温するとバルビツル酸に,希硝酸と煮沸するとパラバン酸に,アルカリでアロキサン酸になる.アロキサンのオキシムビオルル酸という.LD50 184 mg/kg(マウス,静脈).[CAS 50-71-5]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「アロキサン」の意味・わかりやすい解説

アロキサン
alloxan



メソシュウ酸CO(CO2H)2と尿素CO(NH22から得られる環状ウレイドで,メソオキサリル尿素ともいう。水から再結晶すると無色柱状結晶の4水和物が得られるが,空気中では桃色の1水和物となる。150℃以上では無水物となり,256℃で分解。アセトン,アルコール,酢酸に溶け,クロロホルム,石油エーテルに溶けにくい。酸性水溶液は皮膚を紫紅色に染め,硫酸鉄(II)で濃青色を呈する。有毒。一連の環状ウレイド誘導体,リボフラビン(ビタミンB2)の合成原料として重要である。尿酸の硝酸酸化によって合成できる。この反応は1875年に尿酸の構造の推定に用いられた。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

栄養・生化学辞典 「アロキサン」の解説

アロキサン

 C4H2N2O4 (mw142.07).

 動物に注射すると膵臓B細胞を損傷しインスリンの合成・分泌障害を起こし,糖尿病になる.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アロキサン」の意味・わかりやすい解説

アロキサン
alloxane

H2C4O4N2亜鉛などの定量に用いる合成ピリミジンの一種。膵臓のランゲルハンス島のβ細胞がインスリンの合成を行う際に亜鉛と結合して細胞を破壊するので,動物に投与すると,実験的に低インスリン血症性糖尿病を起すことができる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報