アンガラ川(その他表記)Reka Angara

改訂新版 世界大百科事典 「アンガラ川」の意味・わかりやすい解説

アンガラ[川]
Reka Angara

ロシア連邦,シベリアエニセイ川支流。長さ1779km,流域面積46万8000km2バイカル湖とそれに流入する上流諸河川の流域面積を合算すると約104万km2。バイカル湖南西端に近い湖尻にはじまり,北東に流れてイルクーツク盆地をよぎり,深い峡谷に入ってブラーツク貯水池,ウスチ・イリムスク貯水池,ボグチャンスクを過ぎ,エニセイ川の右岸に流入する。この下流部分はベルフニャヤ・ツングースカ川と呼ばれていた。年平均流水量はイルクーツク水力発電所で1700m3/s,エニセイ川合流点で4500m3/s。下流部で11月上旬,ブラーツク貯水池で11~12月に結氷する。融氷は5月上旬で,その頃には流氷が重なり合ったり再結氷した川の表面を洪水流があふれて流れるなどの現象がとりわけ激しい。流域にはイルクーツク(66万kW),ブラーツク(410万kW),ウスチ・イリムスク(430万kW)の貯水池と水力発電所があり,さらに下流のボグチャンスクにも建設計画が進められている。このようにして,アンガラ川の水力開発は6発電所,合計1400万kWにのぼることが予定されている。定期航路はイルクーツクから上流はバイカル湖へ,下流はブラーツクへと結ばれる。伝説では,〈アンガラ〉は老酋長〈バイカル〉の長女とされ,〈バイカル〉の制止をふりきって武士の〈エニセイ〉に嫁いだものといわれている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アンガラ川」の意味・わかりやすい解説

アンガラ川
アンガラがわ
reka Angara

ロシア中東部,東シベリア南部,イルクーツク州クラスノヤルスク地方を流れる川。エニセイ川の右岸支流。全長 1779km (イルクーツク,ブラーツク両人造湖建設前は 1826km) 。流域面積 46万 8000km2 (バイカル湖に流入する河川の流域を含めると 103万 9000km2) 。バイカル湖南西部北岸から流れ出て,中央シベリア台地南西部の山地を貫き,峡谷と谷底平野を交互につくりながら,初め北流,のち西流し,エニセイスクの上流でエニセイ川に注ぐ。 11月下流部から結氷しはじめ,5月中旬下流部まで解氷。おもな支流はベーラヤ,オカ,イーヤ,イリム,タセエバ。玄武岩を切って流れるため急流部が多く,包蔵水力がきわめて大きく,これを利用してイルクーツク,ブラーツク,ウスチイリムスクに世界屈指のダムと水力発電所が建設されており,そのほかにも計画中である。また流域にはアンガラ=イリム鉄鉱床があり,開発が始っている。ブラーツク-イルクーツク間には空路のほか水中翼船航路も開かれ,ブラーツク人造湖は発電所見学を兼ねた観光地としても脚光を浴びてきた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アンガラ川」の意味・わかりやすい解説

アンガラ川
あんがらがわ
Ангара/Angara

ロシア連邦、中央シベリアを流れる川。バイカル湖を水源とする唯一の川で、クラスノヤルスクとイルクーツクの州境となり、エニセイ川に合流する。長さ1779キロメートル、流域面積約104万平方キロメートル。上流部の河岸は非対称で、左岸が100メートルにも及ぶ急崖(きゅうがい)をなし、右岸は緩傾斜である。中央シベリア台地を刻む部分は、かつて早瀬であったが、ブラーツク・ダムができたため湖水に変わった。豊富な水量を利用して、アンガラ・カスケードとよばれる六つのダム建設計画が立案され、このうちイルクーツク、ブラーツク、ウスチ・イリムスクの3ダムが完成した。なかでもブラーツク水力発電所は計画発電能力450万キロワットで、世界最大級の規模を誇り、この電力を利用して、アルミニウム工場が建設されている。流域は鉄鉱、石炭、マグネサイト、岩塩などの地下資源に富み、シベリア開発の最重点基地である。

[小宮山武治]

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