イチヤクソウ(その他表記)Pyrola japonica Klenze

改訂新版 世界大百科事典 「イチヤクソウ」の意味・わかりやすい解説

イチヤクソウ (一薬草)
Pyrola japonica Klenze

低山の林中に生えるイチヤクソウ科常緑多年草初夏,直立する花茎の先に,梅に似た下向きに咲く白い花を数個つける。地中をはう細い地下茎の先に数枚の葉が群生する。葉は太い柄があり,卵状楕円形または広楕円形,長さ3~6cm,幅2~4cm,やや肉質で先は鈍く,縁に細かな鋸歯がある。花茎は15~25cm,3~10個の花がつく。花は広鐘形で離生する5枚の花弁からなり,径1.3cm,10本のおしべがある。花柱の先は上向きに湾曲する。果実は扁平な球形で基部から上の方へ裂け,裂け目の縁にはクモの巣状の毛がある。北海道~九州,朝鮮,中国東北に分布する。イチヤクソウや中国産のP.rotundifolia L.の全草を乾かしたものを鹿蹄草(ろくていそう)といい,ピロラチンpirolatinやアルブチンarbutinなどを含有し,避妊の作用が認められているし,日本では脚気の民間薬とされる。

 イチヤクソウ属Pyrola(英名shinleaf/wintergreen)は北半球の温帯に約20種あり,日本の亜高山帯には葉が円く,淡紅色の花のベニバナイチヤクソウP.incarnata Fischerがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イチヤクソウ」の意味・わかりやすい解説

イチヤクソウ
いちやくそう / 一薬草
[学] Pyrola japonica Klenze

イチヤクソウ科(APG分類:ツツジ科)の多年草。地下に横走する長い根茎がある。葉は常緑で根際につき、広楕円(こうだえん)形で、質が厚く、縁辺に細鋸歯(さいきょし)がある。花茎は高さ15~30センチメートル、5~7月に白色ウメに似た5弁花が斜め下向きに開く。萼(がく)裂片は広披針(こうひしん)形で、先はとがる。花柱は長く花から抜き出る。丘陵帯から山岳帯の腐葉土が多い林内に生え、北海道、本州、四国、九州、朝鮮、中国に分布する。名は薬に用いるところからつけられたもの。イチヤクソウ属は、葉が根際につき長柄があり、花序の軸は無毛、花は総状でまばらにつく。世界に40種、日本にベニバナイチヤクソウ、コイチヤクソウなど7種が分布する。

[高橋秀男 2021年4月16日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イチヤクソウ」の意味・わかりやすい解説

イチヤクソウ(一薬草)
イチヤクソウ
Pyrola japonica

ツツジ科の常緑多年草。日本各地の山地の木陰に生え,細長い地下茎がある。葉は数枚根生し,質が厚く,円形でつやがあり,上面は濃い緑色であるが,下面は柄とともに紅紫色を帯びることがある。初夏,高さ 15~30cmの花茎を出し,その上部に数個の白色の花を下向きにつける。萼片,花弁ともに 5枚あり,10本のおしべの花糸は同じ方向に曲がっている。花柱は長く花外に突き出し上方に湾曲する。葉が小型で腎臓形のジンヨウイチヤクソウ,高さ 10cmくらいでやや小さいコイチヤクソウ,また紅色の美しい花をつけるベニバナイチヤクソウなどいずれも本州中部以北の亜高山帯に生える。

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百科事典マイペディア 「イチヤクソウ」の意味・わかりやすい解説

イチヤクソウ(一薬草)【イチヤクソウ】

イチヤクソウ科の常緑多年草。北海道〜九州,東アジアに分布。山野の林の下にはえる。葉は根ぎわに集まり,柄が長く,卵状楕円形で裏面は紫色を帯びる。6〜7月,高さ20cm内外の直立した花茎に,数個の花が総状下向きにつく。白色の花冠は径約1.3cm,ウメに似て,深く5裂する。近縁のベニバナイチヤクソウは深山の林の下に群生し,10個内外の肉紅色の花をつける。緑白色の花をつけるジンヨウイチヤクソウは針葉樹林下にはえ,葉はまるく腎臓形。

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