イブントゥファイル(英語表記)Ibn Tufayl

デジタル大辞泉 「イブントゥファイル」の意味・読み・例文・類語

イブン‐トゥファイル(Ibn Tufayl)

[?~1185]スペインのイスラム哲学者・医学者。カディスの生まれ。哲学小説「ハイイ=イブン=ヤクザーン」で有名。ラテン語名、アブベケル。

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改訂新版 世界大百科事典 「イブントゥファイル」の意味・わかりやすい解説

イブン・トゥファイル
Ibn Ṭufayl
生没年:1105ころ-85

西方イスラム世界の哲学者,医師。ラテン名はアブバケルAbubacer。グラナダ近郊に生まれマラケシュで没。長くムワッヒド朝カリフ,アブー・ヤークーブ・ユースフに宮廷医師として仕え,1182年その職をイブン・ルシュドに譲って引退した。若干の医学書を残しているが,とくに哲学小説《ヤクザーンの子ハイHayy b.Yaqẓān》(〈覚めた者の息子,生きた者〉の意)の著者として有名。それは絶海孤島独力の思想的営為の末,哲学的英知を達成した老人と,無知な群衆が伝統的で因習的な宗教に満足しているのを嫌って,別の島から脱出してきた若者とが意気投合し,無知な群衆に真理を説き聞かせるため若者の島を訪れたが,そこでは2人の教えをめぐって不和と争いが起こり,2人は絶望して孤島に帰っていくというものである。キリスト教徒へのジハード聖戦)と,ザーヒル派法学とに圧殺されていた当時のムワッヒド朝下の哲学者の苦悩が,小説という形で吐露されたアラブ文学の傑作である。なお,弟子に天文学者のビトルージーがいる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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