日本大百科全書(ニッポニカ) 「イラクサ科」の意味・わかりやすい解説
イラクサ科
いらくさか
[学] Urticaceae
双子葉植物で、近縁のニレ科、アサ科、クワ科とともにエングラーの分類体系では離弁花類イラクサ目に属し、系統関係に基づく分類体系では真正双子葉類のバラ目に属する。これらの目のなかではとくにクワ科に近縁で、葉の基部から3脈が出ることが多い点や、表皮細胞中に鍾乳(しょうにゅう)体とよばれる炭酸カルシウムの結晶が含まれる点などが共通する。だが、植物体に乳液をもたず、胚珠(はいしゅ)が直生することによって、普通、植物体に乳液をもち、胚珠が倒生するクワ科と区別されている。花には普通、雌雄の別があって小さく、風媒で花被(かひ)は目だたないが、多数が密に集まって団集状の花序をつくることが多い。一部の種では雄花の葯(やく)が開花時に機械的にはじけて花粉を散布する特徴をもつ。果実は痩果(そうか)で小さいが、花被片が肉質や多汁質になってそれを包み込むことがある。世界の熱帯から温帯にかけて約47属1300種ほどを含む。一般に六つの連に分けられ、うち四つの連に属する15属60種余りが日本に野生する。茎に長く強い繊維をもつ種が多く、繊維植物として様々な種が世界中で利用されている。また、いくつかの属では若い茎葉が食用にされ、栽培されることもある。
[米倉浩司]