インセスト・タブー(読み)いんせすとたぶー(英語表記)incest taboo

日本大百科全書(ニッポニカ) 「インセスト・タブー」の意味・わかりやすい解説

インセスト・タブー
いんせすとたぶー
incest taboo

ある範疇(はんちゅう)の親族との性関係や結婚を禁ずる規則をいう。あらゆる人間社会においてみられる。基本家族成員両親を除く)の間での性交はほとんど普遍的にインセスト近親相姦)であるとみなされている。

[濱本 満]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のインセスト・タブーの言及

【外婚制】より

…配偶者選択の範囲がさらに,集団外ではあるが一定の〈交叉いとこ〉に限定されている場合には,集団間に女性の規則的交換関係が超世代的に維持され,社会全体の有機的結合を強めることが,レビ・ストロースによって明らかにされている(いとこ婚)。このように社会的紐帯の拡大に役立つという点では,近親相姦禁忌(インセスト・タブー)と共通しており,両者を同じ範疇(はんちゆう)に含める人類学者もいる。たとえば中国では,父系親族である同姓間で通婚しないことを人倫上の問題,すなわち近親相姦禁忌の延長としてとらえているように,その違反は近親相姦と同様の社会的憤激をひき起こし,処罰される社会も少なくない。…

【近親相姦】より

…しかし,このような支配者の近親婚は,その社会の一般的習俗を反映したものではなく,むしろ禁忌を超越する存在としてその神聖さを強調し,王室の血筋の純粋さを保つために行われたと解されている。 近親相姦禁忌(インセスト・タブー)の規定がどのようにして形成されたかについては,従来からさまざまの推測がなされてきた。19世紀の進化主義人類学者は,人類史の初期において近親相姦が通常行われていて,その結果,親子間の性的結合を含む乱婚や,兄弟姉妹間の性的結合などに基づく集団婚が存在したと考えた。…

【婚姻】より

…これらの事実から,言語によるシンボル化はされていないにせよ,ヒト以外の高等霊長類の一部に〈配偶関係〉〈近親交配の回避〉〈血縁〉的紐帯が不完全な形で存在していることは否定しえないであろう。もちろん,人類は現存のサルから直接進化をとげたわけではないから,これらを直ちに人類の婚姻,近親相姦禁忌(インセスト・タブー),親族などと結びつけて考えるのは危険であろう。しかしこれらの事実は,少なくともこれまで人類が文化をもつに至って初めて成立したと考えられていた上記の諸制度の少なくとも一部が人類文化発生前の段階において,生物的次元で存在していた可能性を示唆するものである。…

【人類】より

…今西錦司は《人間家族の起原》(1961)の中で,人間家族をつぎの最小限度の条件を満たす集団と定義している。それは,インセスト・タブー(近親婚の禁忌),エクソガミー(外婚制),コミュニティ(地域社会),配偶者間にディビジョン・オブ・レーバー(分業)が存在すること,である。したがってそれは,動物界に広く見られる母子家族,社会性昆虫に見られる大家族集団などの生物学的家族とは性質を異にするものである。…

【性】より

…生活の基本的諸活動を禁止によって相補的に分割する〈性分業〉は,独身者の立場を困難で半人前のものとし,性的コミュニケーションの一形態としての夫婦を必然的な社会単位にしている。またあらゆる社会でみられるインセスト・タブー(近親相姦の禁忌)は,家族内における夫婦関係以外の性的コミュニケーションを禁止するから,独身者は自分の配偶者を家族外から得なければならない。このように性分業とインセスト・タブーの二つの禁止は家族内関係と家族間(姻族)関係を規制して,小規模社会で最も重要な社会関係である親族関係を組み立て,社会そのものの再生産を可能にする。…

※「インセスト・タブー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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