性交渉をするための十分な
生まれつき、まったく勃起したことがない一次性のインポテンツと、一時的には可能であったがその後インポテンツになった二次性のインポテンツに分類されます。
一次性は、下垂体機能低下症などにより二次性徴が発現していない人にみられます。これに対し二次性のものは、20~40歳では新婚インポテンツなどの精神、
また、頭部・
初めは時々勃起しなくなるだけですが、重症になると常時このような状態になります。
過去4週間の性的行為での勃起の有無、硬度、挿入可能であったかどうか、維持可能であったかどうかについて問診します。早朝勃起の有無や頻度、その時の硬度も診断に有用です。一般に早朝勃起が普通にあれば、精神・心因性のインポテンツと考えられます。
新婚インポテンツは新婚旅行時などで見かけられますが、マスターベーションは可能で早朝勃起現象もあります。
そのほか、二次性徴の出現の有無、たとえば
さらに、飲酒歴、喫煙、うつ病などの有無、降圧薬などの内服歴を調べます。
特殊なものとしては、リジスキャンといって、睡眠中に勃起現象が起こっているかどうかを検査する方法があります。夜間に勃起しているようならば、心因性のインポテンツが疑われます。また、超音波で陰茎の血流を測定することや、陰茎に薬を注入して勃起を誘発する試験もあります。
一次性のインポテンツでは、二次性徴を発現させるために男性ホルモンなどの補充療法を行います。新婚インポテンツや腟内射精困難症などの精神・心因性のインポテンツでは、行動療法、心理療法があります。これで効果がなければクエン酸シルデナフィル(バイアグラ)、塩酸バルデナフィル水和物(レビトラ)、タダラフィル(シアリス)などを用いることになります。
器質性のインポテンツでは、その原因になっている基礎疾患(糖尿病、うつ病など)の治療が必要です。また、インポテンツを起こす可能性のある薬を中止することがすすめられます。しかし、効果のみられないことも多く、バイアグラなどがよく使われています。ただし、バイアグラなどの投与前に、心疾患などの合併症がないこと、硝酸剤(ニトログリセリンなど)を服用していないことを確認する必要があります。
ED治療薬以外の方法としては、陰茎に
精神療法や行動療法を希望する場合は、専門の泌尿器科または精神科を受診してください。
バイアグラなどを希望する人は、内科あるいは泌尿器科を受診し、血液検査、心電図などで異常がなければ処方されます。ED治療薬が無効な場合は、泌尿器科に受診することが必要です。特殊な治療なので、前もって治療が可能かどうか問い合わせてください。
齋藤 和男
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
陰萎ともいう。ラテン語のimpotens(im-は否定,potensは力があるの意)に由来し,英語ではimpotenceという。陰茎の勃起不全または勃起不能のため性交が不能の状態をさす。近年はED(erectile disfunctionの略,勃起不全の意)といわれることが多い。さらに広義には,性欲,勃起,陰茎の腟内挿入,射精,極致感のいずれかを欠く性交不能症とまったく同義に用いられることもあるが,ここでは狭義について述べる。本症の原因は器質的と機能的の二つに大別される。器質的なインポテンツには,(1)脳,脊髄の腫瘍や外傷あるいは骨盤内臓器の広範囲な手術によって,勃起をつかさどる神経が障害された場合,(2)高度の尿道下裂や陰茎への血行障害あるいは陰茎の外傷などによる勃起障害,(3)類宦官(るいかんがん)症などにみられる睾丸の機能不全によって,勃起力に大きく関係している男性ホルモンの分泌が障害されている場合,(4)糖尿病などの慢性消耗性疾患による全身の衰弱などが原因としてあげられる。機能的なインポテンツとは,上記のような明らかな異常がみられないもので,精神的あるいは心理的原因によるものである。インポテンツの大部分は,この機能的原因によるものである。診断にあたっては器質的なものか機能的なものかの区別をつけることが,その治療方針を決定するうえでも重要である。泌尿器科での一般的な身体検査,尿や血液の検査,ホルモン検査などによって器質的原因を追究する。機能的インポテンツでは,性交に際しては勃起しないが,それ以外のとき,たとえば自慰,睡眠時あるいは早朝などには勃起が起こるのが特徴である。しかし勃起神経が障害されている場合のように,明らかな器質的原因がある者では,このような勃起がまったくみられないのが普通である。
治療は,明らかな器質的原因があれば,これに対する療法を行う。たとえば,尿道下裂では勃起を機械的に障害している陰茎腹面の瘢痕(はんこん)組織の切除,男性ホルモンの分泌障害に対してはテストステロンの投与,糖尿病が原因である場合はインシュリンの投与などを行う。しかし勃起をつかさどる神経が障害されている場合は一般に回復は困難である。このように回復が期待できない場合には,適度の硬さを有するシリコン製の勃起補助装置を手術的に陰茎内に埋め込み,陰茎の腟内挿入を可能にする方法がある。機能的なインポテンツは,自己の肉体に対する種々の劣等感,性交に対する過度の精神緊張,新婚時の異常な期待と興奮,その他の経済的,社会的,家庭的な原因による精神的ストレスなどを契機として起こる。このような原因によって性行為に失敗すると,またこの次も失敗するのではないかという失敗恐怖観念にとらわれ,ついには自分はインポテンツであるという固定観念に陥ってしまう。このような機能的インポテンツは大部分が心因性あるいは神経症性のものであるので,治療は精神科医あるいは心理学の専門家による精神療法や心理療法が主流となる。そして患者の恐怖感や固定観念を取り除くことが治療の主眼となるが,実際の治療は必ずしも容易ではない。
執筆者:上野 精
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…すなわち減退は感情発達の未熟や持続的な心的葛藤に基づく性欲発現の抑制である場合が多い。また性不能症(インポテンツ)や冷感症のごとき性機能障害は,性欲の減退とイコールではない。自慰の激しい性不能者もいれば,性交回数の多い冷感症者もいるわけである。…
…狭義には催淫薬と同義語とみなされるが,広義には強壮剤や性ホルモン剤,興奮薬などを含めて指すこともある。男子の性交不能症(インポテンツ)を治療するための薬物と考えることができる。性交不能症には種々の形が含まれるが,陰茎の勃起不能または不完全を改善する目的の薬物を最も直接的に強精剤とよぶ。…
… このような機構から,性行動中枢に対する大脳新皮質のストレスの影響は著しい。このため心因性インポテンツ(新婚インポテンツも含まれる)や,さらには精神病性インポテンツが起こり,臨床上問題になることも少なくない。
[年齢と性行為]
性的能力(ポテンツ)は心因的影響ばかりでなく,年齢によっても低下する。…
※「インポテンツ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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