インポテンス(読み)いんぽてんす(英語表記)impotence 英語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「インポテンス」の意味・わかりやすい解説

インポテンス
いんぽてんす
impotence 英語
Impotenz ドイツ語

インポテンツともいい、陰萎(いんい)とか性的不能症とも訳されている。最近では性交不能のみをインポテンスとよび、射精障害や性欲の欠乏のような性機能障害は含めないことが多い。器質的原因による器質性インポテンスと機能的原因(おもに精神的原因)による機能性インポテンス、両者の混在する混合性インポテンスなどがある。

 器質的原因としては、陰茎の先天的な形態異常、尿道下裂、陰茎異物、形成性陰茎硬化などの外陰部の器質的変化をはじめ、脳卒中、脳腫瘍(しゅよう)、多発性硬化症、脊髄(せきずい)損傷、骨盤内手術などの神経系の器質的変化、高齢によるインポテンスの重要な原因である血管系の器質的変化、加齢に伴う男性ホルモンの減少、末端肥大症クッシング症候群アジソン病粘液水腫などの内分泌系の器質的変化、そのほか肝疾患、腎(じん)疾患、慢性前立腺(せん)炎などの器質的変化があげられる。また、機能的原因としては、精神的緊張、不安、恐怖、性知識の不足などのために性行為に失敗すると、また失敗するのではないかという予期不安を生じ、これが次の性行為を失敗させ、ますます不安や緊張が高まり失敗を繰り返すうちに悪循環に陥り、パートナーと向き合うとかならずこのような症状が発現するようになる。また、過度の自慰、性交による勃起(ぼっき)中枢の興奮性低下などの濫淫(らんいん)によるものなどがある。糖尿病のように器質的要因と心理的要因の混在するものや、降圧薬や自律神経薬が原因のこともある。器質性インポテンスでは原因疾患の治療がたいせつで、神経障害のある場合は陰圧式勃起補助具やプロスタグランジンE1の陰茎海綿体注射を試みる。これで効果がない場合はシリコーンプロステーシス陰茎内移植手術が行われる。心理的抑制によるものには行動療法をおもに行うが、正しい性知識を与えたり、抗不安剤などの投与も有効である。また陰圧式勃起補助具やプロスタグランジンE1の陰茎海綿体注射で人工的に勃起させ性交を試み、自信を回復させるのがよい。

[白井將文]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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