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劣等感 レットウカン

百科事典マイペディアの解説

劣等感【れっとうかん】

自分が他人に比して劣っているという感情。英語ではinferiority feeling。補償により処理しようとする傾向も見られる一方,A.アードラーのように劣等感を肯定的に論じる者もある。
→関連項目コンプレクス

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世界大百科事典 第2版の解説

れっとうかん【劣等感 inferiority feeling】

自己の欠陥,弱点等を意識し,自分が他の人よりも劣っていると感じる否定的な感情。A.アードラーは,人間は劣等感を持っているからこそ,それを補うために努力し,それを通じて人格も作られ,人類も進歩すると,その肯定的な役割をのべた。大やけどの傷痕に対する劣等感を克服して世界的な学者となった野口英世,吃音(きつおん)を克服して雄弁家となったデモステネスらをその例としてあげることができる。しかし,逆に劣等感を隠すために,他人に尊大になるとか攻撃的にふるまうといった誤った補償の形をとることもある。

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大辞林 第三版の解説

れっとうかん【劣等感】

自分が他より劣っているという感情。 ↔ 優越感

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

劣等感
れっとうかん
inferiority complex

日常的な意味では、自分自身が他人に比較して精神的、身体的になんらかの欠点をもち、無価値な存在であるという、意識的あるいは無意識的な感情傾向のことをいう。アドラーによってつくられた用語で、個人心理学の中核をなす概念であるが、彼は、他人に比較して劣っているということより、劣っているものを補い完全なものにしようとする傾向のことを強調する。たとえば、雄弁家として有名なデモステネスは、ひどく訥弁(とつべん)であったがために、それを補償し克服して雄弁家となったといわれるようなものである。だから、劣等感は、優越することを求め権力をもとうとする感情傾向と表裏をなしているものであるといわれる。その意味では、劣等感は優越感の裏返しであるともいえる。
 アドラーによれば、補償されるべき欠点は、当初には身体的な器官、その形態あるいは機能とみなされたが、身体的なものに限定されるわけではない。知的な競争で失敗した子供が、運動競技で優越を確保しようとするのも劣等感の補償と考えられる。こうした意味での劣等感は、教育的に望ましいものと考えられるが、あまりにも劣等感が強く、自分の欠点を補償することができそうにないと、過度に優越、権力を求めるようになり、うつ病などの病因にもなってくる。これは、落ち着きがなく、せっかちで、激情に陥りやすくなり、他人のことを顧慮することができなくなるからである。こうした態度は、誇大妄想といってよいほどの色彩を帯びてくる。
 劣等感という概念は一般化され、日常語化されすぎたため、あるいはまた、劣等感が補償されるという考え方そのものが安易に考えられすぎたため、精神分析や心理学ではなおざりにされ軽視される傾向があるが、その基本的考え方には検討し反省されるべき内容が含まれている。[外林大作・川幡政道]

個人心理学と劣等感

アドラーの精神分析は、フロイトと決別してからは「個人心理学」とよばれている。この「個人」の語源的意味は「区分することができないものin-dividium」というものであり、人間を一つの全体とみなし、個々の部分はこの全体によって規定されているという考え方を示している。この意味からいえば、劣等感は個々の欠点となっている部分が補償されるというより、個人が全体としてより統一のとれたものとなり、自己実現を果たそうとする傾向のことである。この考え方は、ゲシュタルト心理学の主張とも軌を一にするところがある。より優れた、意味のある全体をつくろうとするゲシュタルテンgestaltenと類似の概念である。
 フロイトにおいてはとくに劣等感という概念は使われないが、人間は生まれながらにして無力で弱く、独立して生活することができないことが強調され、こうした状況を補償する形でナルシシズムの概念が導入される。または去勢、愛の喪失が強調され、失ったものを取り返そうとする願望がもっとも重要な衝動とみなされるが、こうしたものは基本的には劣等感と類似なものとみなすことができる。劣等感という用語があまりにも一般化されたため、または劣等感を例示した事実が不適切であったために、誤解されやすいものとなってしまったところがある。[外林大作・川幡政道]
『アルフレッド・アドラー著、安田一郎訳『器官劣等性の研究』(1984・金剛出版) ▽外林大作著『フロイトの読み方2 ナルシズムの喪失』(1988・誠信書房) ▽アルフレッド・アドラー著、岸見一郎訳、野田俊作監訳『個人心理学講義――生きることの科学』(1996・一光社)』

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世界大百科事典内の劣等感の言及

【アードラー】より

…幼時からくる病や事故に遭ったりして身体障害を経験し,そのため発奮して医師になった。身体器官の劣等性に興味をもち,人間には必ず形態的ないし機能的に劣った部分があることを見いだし,すべての人間に普遍的に劣等感が存在すると考えるようになった。そして,《器官劣等性の研究》(1907)の中で,過去の性的外傷体験を重視するフロイトの説に反対して,目的論的な立場から,自己の器官の劣等性に由来する劣等感と,それを補償しようとする〈権力への意志〉を重視した。…

※「劣等感」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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