日本大百科全書(ニッポニカ) 「インマルサット」の意味・わかりやすい解説
インマルサット
いんまるさっと
Inmarsat plc
通信衛星による移動体通信サービスを提供する民間の通信事業者。また、このサービスに用いられる衛星通信システム、および衛星通信回線を提供する静止衛星のことをもさす。前身の国際海事衛星機構International Maritime Satellite Organization(INMARSAT(インマルサット))は、政府間条約により、海上を中心とした総合的な移動衛星通信サービスを全地球的に管理、提供する国際機関として、1979年7月16日に設立された。本部はロンドンに置かれ、サービスは1982年に開始した。当初は海上での船舶通信サービスを目的としたが、やがて船舶のみでなく、陸上、航空機、地上移動体をも結ぶようになったことから、1994年の第10回総会において、機構は名称を国際移動通信衛星機構International Mobile Satellite Organization(IMSO)に変更。その後、民間企業による衛星通信事業への参入や競争激化等の環境の変化に対応し、1998年に事業部門を民営化することが決定され、民間会社としてのインマルサットInmarsat plcが誕生した。1999年4月に通信衛星「インマルサット」の運用とそれによる通信回線の提供業務を機構から引き継ぎ、業務を開始した。2011年3月末時点で、11基の静止衛星を保有し運用している。
提供サービスには、船舶向けの音声・インターネットサービス「FleetBroadband(フリートブロードバンド)」、航空機向けの音声・インターネットサービス「SwiftBroadband(スウィフトブロードバンド)」、陸上の通信回線のない場所でも小型端末で通話・インターネットができる「BGAN(ビーギャン)」などがある。サービスは各国の通信事業者を通じて提供され、日本ではKDDI、JSAT MOBILE Communications、日本デジコムの3社がサービスや機器を提供している。
[高橋陽一]