六訂版 家庭医学大全科 「ウェルニッケ脳症」の解説
ウェルニッケ脳症
ウェルニッケのうしょう
Wernicke's encephalopathy
(脳・神経・筋の病気)
どんな病気か
ビタミンB1(チアミン)の欠乏による脳症です。ビタミンB1の欠乏のみでも発症しますが、アルコール多飲者に多く起こるため、アルコールも複合的に影響し発症するとも推測されています。
原因は何か
症状の現れ方
脳内の非常に特異的な場所(
眼球運動障害は
慢性期になると、
検査と診断
診断できるか否かは、この病気を思いつくかどうかで決まるといっても過言ではありません。典型的な3主要症状が現れた時には、治療を行っても後遺症を残すことが多いため、できるかぎり早期に診断し早期に治療を開始することが極めて重要です。
症状と神経所見から本症を疑い、ビタミン不足になりうる栄養不良状態が存在したかどうかを聴取し、MRIで病変部位を確認できれば、診断できます。
治療の方法
ビタミンB1測定の血液検査は結果が出るまで時間がかかるため、通常は結果が出る前に治療を開始します。ビタミンB1の欠乏は、ウェルニッケ脳症のみならず末梢神経障害も起こすため、四肢(とくに下肢優位)の対称性の手袋靴下型の知覚障害(ちょうど手袋や靴下をはいたように、ジンジン感が生じる)や腱反射の減弱なども伴うことが普通です。治療は早急にビタミンB1を投与することで、早ければ早いほど効果が期待できます。
病気に気づいたらどうする
長期間のアルコール多飲者(中毒患者)が、通常の酔っ払った状態とは異なる意識状態の異変を感じたら、本症を疑うことが重要で、早急に救急患者として受診することが大切です。
栗山 勝
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報