改訂新版 世界大百科事典 「ウマゴヤシ」の意味・わかりやすい解説
ウマゴヤシ
bur clover
Medicago polymorpha L.(=M.hispida Gaertn.)
飼料および緑肥とするために栽培もされるマメ科の植物。飼料としてウマに与えると肥えるということから,ウマゴヤシ(馬肥し)という和名がついた。バークローバーとも呼ぶが,これは莢(さや)に毬(いが)burのようなとげがあるためである。ヨーロッパ原産で,日本には江戸時代に渡来したとされるが,さらに古い時代に朝鮮から伝播されていたとする説もある。世界の暖帯,温帯に広く帰化している。海岸や平地の道ばたに生える一年草または越年草で,全体ほとんど無毛。茎は地をはって先で斜上するか,またはやや立ち上がって,高さ約40cm。葉は羽状の3小葉で,頂小葉には短い小葉柄がある。小葉は広倒卵形,長さ1~2cmで先端は円いかまたはややくぼみ,上部のふちには鋸歯がある。花は3~5月に咲き,黄色の蝶形花で,長さ3~4mm,4~8個が集まって短い総状花序をつくる。豆果は渦巻状に2~3回巻いており,径5~6mm,先端がかぎ状に曲がった硬いとげがあり,5個内外の種子がある。寒さに弱く,暖地で水田の裏作に栽培される。秋の稲刈り後すぐに種子をまき,春に田に鋤(す)き込んで緑肥とする。若葉は食用とし,飼料としては,青刈りして家畜に与えるほか,乾草やサイレージにもする。近縁種のムラサキウマゴヤシM.sativa L.やM.falcataはアルファルファまたはルーサンと呼ばれ,古来世界各地で飼料として栽培されている。
また,コメツブウマゴヤシM.lupulina L.はウマゴヤシに似たヨーロッパ原産の帰化植物で,同じく牧草や緑肥として広く利用されている。花はやや小型で,20~30花が集まって総状花序をつくり,豆果は黒色に熟し,米粒に似た楕円形で,中に1個の種子を入れる。
執筆者:星川 清親+大橋 広好
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報