エッジワース(Francis Ysidro Edgeworth)
えっじわーす
Francis Ysidro Edgeworth
(1845―1926)
イギリスの経済学者、統計学者。アイルランドに生まれ、オックスフォード大学を卒業。オックスフォード大学経済学教授(1891~1922)のかたわら、王立経済学会(RES)副会長、王立統計学会(RSS)会長、イギリス科学振興協会(BAAS)経済学部会会長などの要職を歴任し、また有名な学術雑誌『エコノミック・ジャーナル』Economic Journalの創刊(1891)以降、没するまでの35年間にわたって、初代編集者としても活躍した。
彼はA・マーシャルがケンブリッジ大学教授であった同時代に、他方のオックスフォード大学教授であったが、マーシャルが大著作を物したのとは対照的に、多数の学術論文を発表した。とくに統計学ではK・ピアソンと並んで統計数理の基礎理論を固めたことで知られ、ことにエッジワース式物価指数は有名である。数理経済学の方面では、無差別曲線、契約曲線などが彼の創案にかかる。また彼の交換経済におけるコアcore(核)理論は「市場の失敗(欠落)」failure of marketなどの問題との関連で脚光を浴びた。
[島津亮二]
エッジワース(Kenneth Essex Edgeworth)
えっじわーす
Kenneth Essex Edgeworth
(1880―1972)
アイルランドの天文学者、経済学者。ウェストミース州に生まれる。幼少時、叔父が彼の生家を天体観測所として使っていたこともあり、天文学に興味をもつ。イギリスの陸軍士官学校、工兵学校で学び、第一次世界大戦時はフランスで従軍した。戦後1926年に退役し、一時スーダンで電信電話局に勤めた後、1931年にダブリンに戻った。そこで国際経済を学び、経済に関する本を4冊出版している。天文学関連では、1943年に「われわれの惑星系の進化」という重要な論文を提出している。そのなかで、海王星の外側に短周期彗星(すいせい)の起源と思われる天体が存在するとした、現在のエッジワース・カイパーベルト(天体)の考え方を最初に示した。これはカイパーによる同様な提案に8年先だち、オールトによる、太陽系最外縁にあると考えられている長周期彗星の起源と思われる天体の存在の提案に7年先だつものである。
[編集部 2023年4月20日]
エッジワース(Maria Edgeworth)
えっじわーす
Maria Edgeworth
(1768―1849)
アイルランド系イギリスの女流小説家。イギリスのオックスフォードシャーに生まれるが、のちアイルランドに住み、地主の父の財産管理を助けた。教育理論家でもある父の影響を受けて、教訓的童話集を数冊出版するとともに、アイルランドの地主の4世代にわたる没落の歴史を執事に語らせた処女作『ラックレント城』(1800)でウォルター・スコットに影響を与え、いわゆる「地方小説」の道を開いた。作品はほかに『ベリンダ』(1801)、『不在地主』(1812)など。
[安達美代子]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
エッジワース
Francis Ysidro Edgeworth
生没年:1845-1926
イギリスの数理経済学者,統計学者。アイルランド中央部のロングフォード州エッジワースタウンの名家の生れ。オックスフォード大学卒。1880-90年,ロンドンのキングズ・カレッジで道徳科学,経済学を講じ,1891-1922年,オックスフォード大学経済学教授。オール・ソウルズ・カレッジのフェロー。1889年と1922年,イギリス学術協会British Association経済学部会会長。1912-14年,王立統計学会会長。《エコノミック・ジャーナル》の初代編集者。著書はわずか3冊だが,倫理的意味での価値論,経済的交換論,確率論,統計学,指数論など多方面で当時世界第一級の数多くの論文を著し,その多くは自身で編集した3巻の論文集《経済学論文集》(1925)に収められている。処女作《倫理学の新旧二方法》(1877)では,おそらく人文・社会科学で初めてラグランジュの未定係数法を使用。主著《数理心理学》(1881)は,難解だが,当時最高の数理的倫理学・政治学・経済学書であり,無差別曲線,契約曲線,ボックス・ダイヤグラムなどの考えの最初の導入で知られていた。また1950年代の末葉以降,コアcoreと呼ばれる競争均衡のゲームの理論的解の概念の最初の定式化という,際立った先駆性の点でも理論経済学者の注目を集めている。指数算式の一つであるエッジワース算式の提唱者としても知られる。
執筆者:早坂 忠
エッジワース
Maria Edgeworth
生没年:1767-1849
イギリスの女流作家。生涯の大部分をアイルランドにある父の領地で送ったが,しばしばパリやロンドンに旅行し,文人思想家と交わった。父の影響を受けた教育理論書,その応用編である児童教訓物語などを書いたが,特にアイルランドの地方生活風俗を活写した《ラックレント城》(1800),《不在地主》(1812)で有名。地方風俗を小説の材料に使う点で,スコットが彼女の影響を受けている。
執筆者:海老根 宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
エッジワース
Edgeworth, Francis Ysidro
[生]1845.2.8. エッジワースタウン
[没]1926.2.13. オックスフォード
イギリスの経済,統計学者。オックスフォード大学卒業後,1891年以降母校の経済学ドラモンド講座教授,1922年名誉教授。イギリス学術協会経済学部会会長,王立統計学会会長,イギリス学士院会員などを歴任し,また"Economic Journal"誌の初代編集長。倫理学から出発したが,W.ジェボンズの影響を受けて経済学に接近し『数理心理学』 Mathematical Psychics: An Essay on the Application of Mathematics to the Moral Sciences (1881) で契約曲線,無差別曲線などの新しい分析用具を用いて数理経済学に新生面を開いた。指数,確率,独占理論,国際貿易論など多くの個別分野での独創的な研究論文は"Papers relating to Political Economy" (3巻,1925) に所収。
エッジワース
Edgeworth, Maria
[生]1767.1.1. オックスフォードシャー,ブラックバートン
[没]1849.5.22. アイルランド,エッジワースタウン
アイルランド系のイギリスの女流作家。処女作『ラックレント館』 Castle Rackrent (1800) は,アイルランド貴族の数代にわたる没落過程を克明に描き,代表作『不在地主』 The Absentee (12) では,アイルランドの地主の妻のロンドン社交界における派手な生活ぶりを描いている。ほかに『ベリンダ』 Belinda (01) ,『オーモンド』 Ormond (17) など。また児童文学の作者としても著名。
エッジワース
Edgeworth, Richard Lovell
[生]1744.5.31. サマセット,バス
[没]1817.6.13. エッジワースタウン
イギリスの発明家,教育家。女流作家 M.エッジワースの父親で,その小説に強い影響を及ぼした。アイルランドの大地主。電信通話,帆走車,三輪車などを発明。教育に興味をもち,J.- J.ルソーと妻に触発され,娘マリアと共同執筆で『実践的教育』 Practical Educationを著わし,教育はすべからく子供の心理の科学的研究に立脚すべきことを論じた。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
百科事典マイペディア
「エッジワース」の意味・わかりやすい解説
エッジワース
英国の統計学者,経済学者。1891年オックスフォード大学教授。王立統計学会会長(1912年−1914年)。誤差,相関,指数等を研究,K.ピアソンとともに統計数理の基礎を築いた。エッジワース式物価指数,直線相関関係,エッジワース・ボックスダイアグラムの研究は有名。価値論や独占価格理論の数学的分析を進め,主著《数理心理学》がある。また《エコノミック・ジャーナル》誌の初代編集長。
エッジワース
英国の女性作家。アイルランドの富裕な地主の娘として生まれ,父親の影響を受けつつ文筆活動に励む。《教養ある御婦人方へ》(1795年)では女性の教育を擁護,《親の手助け》(1795年)は子供のための物語集で,長く読み継がれた。アイルランドを舞台とした小説《ラックレント城》(1800年)は先駆的な歴史小説・地方小説で,ウォルター・スコットに多大な影響を及ぼした。
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
エッジワース
生年月日:1845年2月8日
イギリスの経済学者
1926年没
出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内のエッジワースの言及
【エコノミック・ジャーナル】より
…創刊当時は文字どおり世界第一級,類似の学術誌が激増した今日でも世界有数の純学術的経済学の専門雑誌である。[F.Y.エッジワース]が初代編集者で,[J.M.ケインズ]が12‐45年の33年間その任に当たったが,前者も終生共同編集者として発展に貢献した。45年以降E.A.G.ロビンソンと[R.F.ハロッド]が共同編集者となってから,編集者の交代もかなり頻繁になり,また,おそらく経済学の多極的専門化の進展のために共同編集者の数も増えて今日にいたっている。…
※「エッジワース」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」