太陽系外縁天体(読み)タイヨウケイガイエンテンタイ(その他表記)Trans Neptunian Object

デジタル大辞泉 「太陽系外縁天体」の意味・読み・例文・類語

たいようけいがいえん‐てんたい〔タイヤウケイグワイエン‐〕【太陽系外縁天体】

trans-Neptunian objects太陽系天体うち海王星軌道外にある天体の総称冥王星エリスカイパーベルト天体・オールトの雲などからなる。外縁天体。海王星以遠天体トランスネプチュニアン天体TNO

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「太陽系外縁天体」の意味・わかりやすい解説

太陽系外縁天体
たいようけいがいえんてんたい
Trans Neptunian Object
Edgeworth-Kuiper Beld Object
Kuiper Belt Object

太陽系の惑星中もっとも外側にあると考えられる海王星(かいおうせい)の、さらに外側に広く分布する小天体群。1990年代から観測が進んで、現在、約1800個を超える太陽系外縁天体が登録されている(登録数は『理科年表』を参照)。大きさは観測されているもので数十キロメートルから2000キロメートル程度で、冥王星(めいおうせい)はその一つであることが明らかとなり、2006年8月の国際天文学連合(IAU)総会において、冥王星は惑星ではなく太陽系外縁天体のなかの大きなものとして、「準惑星dwarf planet」という位置づけがなされた。なお太陽系外縁天体は、学術的には海王星以遠天体を意味するTNO、またその存在を短周期彗星(すいせい)の軌道などから予測したアイルランドの天文学者K・エッジワース、アメリカの天文学者G・カイパーにちなんで、エッジワース・カイパーベルト天体、カイパーベルト天体などともよばれてきたが、太陽系理解のうえでのその重要性にかんがみ、日本では太陽系外縁天体(太陽系に限定されることが明らかな場合は単に「外縁天体」でもよい)という呼称を推奨することが、2007年(平成19)、日本学術会議において決定された。

 冥王星以外の太陽系外縁天体の発見は、1993年4月発売の科学誌『ネイチャー』に掲載された、ハワイ大学天文学研究所のD・ジューイットDavid Jewitt(1958― )らによる報告が最初である。太陽からの距離は冥王星の約1.12倍(平均44.4天文単位)、地球とほぼ同じ公転軌道面内の円形の軌道を300年の周期で回っている直径200~250キロメートルの赤い色をした天体で、「1992QB1」と名づけられた。その後同類の天体の発見が相次ぎ、本体は水やメタンなどの氷を主成分として砂粒などの岩石成分を含み、太陽系を周回する短周期彗星はこれらを起源とすると考えられる。

 太陽系外縁天体には、冥王星よりもやや大きいと思われるエリス、長大な楕円(だえん)軌道を描いて海王星の10倍という遠くまで達するセドナなどもある。長円軌道をもつ外縁天体は散乱型とよばれ、はるか遠方に存在が仮定されている長周期彗星の源、オールト雲との関係にも関心がもたれている。現代の太陽系形成論では、太陽系外縁天体は基本的に、46億年前の太陽系形成時の始原的な天体である「微惑星」の生き残りと考えられている。したがって太陽系外縁天体の発見は、太陽系を空間的にも時間的にも非常に大きなものとして再認識させるものでもあった。

[海部宣男 2017年7月19日]


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