六訂版 家庭医学大全科 「オウム病」の解説
オウム病
オウムびょう
Psittacosis
(呼吸器の病気)
どんな病気か
オウム病は、クラミジア・シッタシという微生物を保菌している鳥からヒトに感染を来す人獣共通感染症で、肺炎を主体とする急性感染症です。
年齢分布は9~90歳(中央値53歳)と幅広い年齢層にみられますが、30歳未満での発症は少ないと報告されています。発症日を月別にみると、鳥類の繁殖期である4~6月に多いほか、1~3月もやや多いとされています。
肺炎に占めるオウム病の頻度は、世界的にもあまり高いものではなく、日本でも1~2%程度です。オウム病の多くは散発例で、これまで集団発生は極めてまれであるとされていました。しかし、日本では2001年以降、相次いで動物展示施設で集団発生が確認されています。
どのように感染し発症するか
推定感染源としてはインコに関連したものが最も多く、次いでハト、オウムに関連したものです。鳥では保菌していても、ほとんどは外見上健常にみえます。弱った時や、ヒナを育てる期間などでストレスが加わった時、他の感染症を合併した時などには、不定期に便中に菌を排泄しヒトへの感染源となります。
感染経路は、罹患鳥の分泌物や乾燥した排泄物、羽毛などを介して経気道的に吸入したり、口移しで餌を与えたりする際の経口感染によって起こります。吸入された菌は、宿主細胞に取り込まれて細胞内で増殖し、下気道へ浸潤するか、血液を介して肺胞や肝臓・
症状の現れ方
オウム病の症状は、軽症のインフルエンザ様症状(悪寒を伴う高熱、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感など)から多臓器障害を伴う劇症型まで多彩です。初発症状として、38℃以上の発熱および
重症例では、呼吸困難感(チアノーゼ)や意識障害を来し、さらに血液を介して多臓器へも炎症が及び、
検査と診断
感染症発生動向調査では、報告の基準を①病原体の分離、②病原体の遺伝子の検出、③病原体に対する抗体の検出、としています。しかしこのなかで、唯一普及しているのが、③の補体結合反応による血清抗体価測定です。
治療の方法
クラミジア感染症の治療は、後述のクラミジア・ニューモニエ肺炎やクラミジア・トラコマチス肺炎と同じですので、クラミジア・トラコマチス肺炎を参照してください。
医者に相談するポイント
鳥との接触歴をもつ人や鳥の飼育者に咳や発熱が出現した場合はオウム病が疑われるので、そのことを受診先の医師に伝えることが最も重要なポイントです。飼育鳥が死んでいる場合は、とくに疑いが濃くなるので、必ず伝えてください。
一方、鳥類はクラミジアを保有している状態が自然であり、菌を排出していても必ずしも感染源とはならないことを理解する必要もあります。むやみに感染鳥を危険視すべきではなく、鳥との接触や飼育方法に注意を払うことが重要です。
宮下 修行
オウム病
オウムびょう
Psittacosis
(感染症)
どんな感染症か
オウム病は、鳥がもっている細菌、オウム病クラミジアによる感染症です。一見健康な鳥でも数%は保菌していて、ストレスや病気で体調を崩すと、糞便や唾液中に菌を排出し感染源となります。排泄したクラミジアをほこりとともに吸入したり、口移しの餌やりで感染することもあります。ヒトからヒトに感染することはほとんどありません。年間40例程度の報告があります。
症状の現れ方
感染後1~2週間の潜伏期ののち、突然の高熱(39℃以上)や
検査と診断
白血球数は正常で、肝機能障害などを示すことが多く、特異的検査としてのどから病原体を検出したり、血清抗体価の上昇を認めた場合に、オウム病と確定診断されます。早期診断に結びつくポイントとして、鳥を飼っている人は、発熱、咳で受診した時には、医師に鳥の飼育のことを申告することが重要です。
治療・予防の方法
クラミジアに有効な抗菌薬で早期に治療をすれば経過は良好ですが、重症肺炎や合併症のある場合は入院して全身管理をします。予防は日常の鳥の健康管理と、鳥かごの掃除をする時にほこりを吸い込まないように気をつけて、掃除のあとは手洗いをします。
病気に気づいたらどうする
治療の遅れは合併症・続発症を引き起こすため、ただちに受診します。必ず医師に鳥の飼育のことを申告します。病鳥は獣医師に相談すれば治療可能なので、放したり処分しないようにします。
岸本 寿男
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報