ロシア連邦,西シベリアの大河。アルタイ山中のビヤ,カトゥニ両川の合流点(ビイスク市付近)から下流をオビ川と呼称する。中流部では左岸からイルティシ川を合わせ,北上して北極海にそそぐ。本流の長さ3650km,イルティシ川水源からの全長5410km,流域面積299万km2。カトゥニ川水源は標高4000m級のアルタイ山脈で,急勾配の斜面を400km流下すると標高は500mになり,中・下流部が著しく長い。本流はバルナウル,ノボシビルスクを過ぎ,西シベリア低地を流れるが,中流部は多くの分流に分かれる。ここには石油・天然ガスの埋蔵があり,分流の砂州にはサモトロルなどの油田が稼行されて,いわゆるチュメニ油田の主要部をなしている。河口に約4000km2の広大な三角州をつくってオビ湾に終わる。平均流量は中流のバルナウルで約1500m3/s,河口に近いサレハルドでは1万2300m3/s。融氷時の洪水は4月(上流部)ないし5月(下流部)から7月下旬まで続く。とくに中流部のバシュガン湿地は,水深は浅いとはいえ日本の面積ほどの平野が浸水する。結氷日数は上流部で150日,下流部で220日。川は魚類に富み,チョウザメ,ウグイ,カワマスの類が漁獲される。水力発電所はブフタルマBukhtarma,ウスチ・カメノゴルスクUst'-Kamenogorsk,ノボシビルスクに建設されている。主要河港はノボシビルスク,パブロダル,トボリスク,オムスク,チュメニなどである。ロシア人がオビ川に到達したのは,16世紀半ばで,1581-84年のエルマークの遠征により,中・下流域はロシアの手に帰した。以来,水上交通・輸送路として利用されてきたが,沿岸の油田の開発が進むにつれ,いっそうその重要性を増した。
執筆者:渡辺 一夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ロシア連邦中部の川。西シベリアを流れて北極海に注ぐ世界有数の大河。本流の長さは3650キロメートル、支流のイルティシ川の源からの長さは5410キロメートル、流域面積299万平方キロメートル。最上流部は中国とモンゴルとの国境に近いアルタイ山脈に源をもつ二つの川からなる。ビエルーハ峰(4506メートル)の氷河から流下するカトゥニ川と、テレツコエ湖から発するビヤ川で、これらがアルタイ地区のビースク付近で合流してオビ川となる。ここまでの400キロメートルで標高は4000メートルから500メートルへと激しく低下する。本流は山地を北流し、アルタイ地区の中心都市バルナウルを過ぎるころから西シベリア低地に出る。シベリア最大の都市ノボシビルスクを貫流し、トムスク付近で右岸からトミ川をあわせて北西に流れ、さらにチュメニ州ハンティ・マンシスクで左岸からイルティシ川をあわせる。ここから河口までの1160キロは、標高差わずか40メートルである。最下流部は乱流し、網状流となってカラ海のオビ湾奥に三角州をつくって流入する。オビ川とイルティシ川に挟まれたバシューガン湿原は、春の雪解け時には日本の面積ほどが水没する。全流域にわたって、ほぼ半年間は結氷する。
流域はロシア連邦の国民経済上重要な地域となっており、活発な水上輸送が行われている。シベリア鉄道沿いの一帯では小麦の生産が盛んで、また、支流のトミ川流域にあるクズバス炭田は国内有数の埋蔵量をもち、ノボシビルスクやノボクズネツクを中心としたクズネツク・コンビナートを形成している。1950年代以降、中流域のスルグートやイルティシ川流域のチュメニを中心とする油田の開発が進められている。一方、豊富な水量を利用して、59年にはノボシビルスク貯水池(オビ海ともいう)と水力発電所が建設された。さらに将来はオビ川の流域を変更して南流させ、中央アジアの灌漑(かんがい)を行う計画もある。
[宇根 寛]
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