日本大百科全書(ニッポニカ)「カタクリ」の解説
カタクリ
かたくり / 片栗
[学] Erythronium japonicum Decne.
ユリ科(APG分類:ユリ科)の球根性多年草。球根は鱗茎(りんけい)で白色の長楕円(ちょうだえん)形。花茎は10~20センチメートル。葉は普通2枚が花茎下部につき、長楕円形ないし楕円形で淡緑色。暗紫色の斑紋(はんもん)のあるものが多い。早春に雪解けとともに開花する。花は花茎の先に1、2個開き、花被(かひ)は6枚。紅紫色で内側基部近くにW字状の斑紋がある。まれに白色花もある。果実は蒴果(さくか)で3稜(りょう)のある円形。北海道から九州に生育するが、四国、九州ではまれにしかみられない。カタクリ属は東アジア、北アメリカ、ヨーロッパに20種あるが、日本には1種のみ分布する。
全草をゆでて食用とするが、鱗茎から良質のデンプンをとり、かたくり粉と称したが、現在かたくり粉と称しているもののほとんどはジャガイモデンプンである。薬草として強壮剤、胃腸薬、解毒剤に用いる。古名のカタカゴがカタコユリとなり、転訛(てんか)してカタクリとなったとされる。ほかにカゴ、イノシタ、ブンダイユリ、ハツユリの名もある。
[冨樫 誠 2018年12月13日]