カラスク文化(読み)カラスクぶんか

改訂新版 世界大百科事典 「カラスク文化」の意味・わかりやすい解説

カラスク文化 (カラスクぶんか)

ロシア,南シベリアと上部オビのサヤン・アルタイ山岳地帯に分布する青銅器時代後期の文化。アファナシエバ文化アンドロノボ文化に続く,前2千年紀終末~前1千年紀初頭の文化で,集落址や群集墓が残されており,ハカス自治州のカラスクKarasuk河岸の墳墓を基準として命名された。墓は石槨をもち,地表には,低い円形の石積墳丘,あるいは板石を立てた方形プランの列石をもっている。ソ連の研究者によると,この文化期は母系社会から父系社会への移行期であるといわれる。牧畜に従事し,銅鉱を採掘し,土器を製作し,羊毛から布を織ることを知っていた。青銅製の装飾品,斧,のみ,剣,鎌,曲り柄刀子などには,幾何学文の装飾が付せられるとともに,野生獣や家畜頭部などの彫刻をもっている。この文化は,北中国,モンゴリア,トゥーバ,ザバイカル,沿バイカル,シベリア西部の各地区の住民と深い関係のあったことが知られている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カラスク文化」の意味・わかりやすい解説

カラスク文化
からすくぶんか
Карасук/Karasuk ロシア語

紀元前二千年紀末、南シベリアのエニセイ川上流域、ことにハカシア共和国ミヌシンスク盆地を中心に形成された青銅器時代の文化。この文化の研究は、主として墓址(ぼし)によってなされている。数百基よりなる氏族墓地もまれではなく、墓は一般に、板石を円形もしくは長方形に立て並べて囲われ、その中に墓壙(ぼこう)がある。埋葬された遺体は、頭を北東方向に向けた側臥(そくが)屈葬で、頭部付近に土器が置かれている。また、刀子(とうす)(ナイフ)、短剣闘斧(とうふ)、腕輪、ボタン、帯金具、針などの各種の青銅製品が副葬された。遺体の傍らに家畜の骨がみられるが、これは死者に肉なども供えたのであろう。彼らの生業は牧畜によっていたと考えられ、牧民生活に欠かせない青銅製の刀子の柄には、ヤギの頭をかたどったものもある。この文化は、西はカザフスタン、東はアルタイからモンゴリアにかけての草原や森林地帯の諸民族文化にも大きな影響を与えた。

[大塚和義]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カラスク文化」の意味・わかりやすい解説

カラスク文化
カラスクぶんか
Karasuk culture

南シベリア,オビ川上流のサヤン,アルタイ高地に分布した青銅器時代 (前 1200~700) 終末期の文化。この文化を特徴づけるのは墳墓群で,1ヵ所に 100基以上を数えることもある。石室をもつ墳墓で,地上に石を環状にめぐらし,また板石を立てて四角形に囲んだ低い墳丘をもっている。この文化期は,母系制社会から父系制社会への移行期にあたると考えられている。牧畜社会で,銅鉱の採石を行い,土器を製作し,獣毛からの織物をつくっている。青銅製の装身具,斧,短剣,刀子には,幾何学模様の装飾が施されているが,それ以外にしばしば,野生獣もしくは家畜などの頭部や全身を形づくった装飾も使っている。これらカラスク文化の人たちと,中国北部,モンゴル,トゥーバ,ザバイカル,プリバイカル,西シベリア各地の古代住民たちとの関係が論じられている。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「カラスク文化」の解説

カラスク文化(カラスクぶんか)
Karasuk

前2千年紀末~前1千年紀初め,南シベリア,中央アジア北部に広がった青銅器時代後期の文化。ミヌシンスク盆地,カラスク川沿いの古墓から命名。アンドロノヴォ文化よりも牧畜の比重が高くなり,土器は丸底が多くなる。青銅製の短剣,斧,ナイフがつくられ,しばしば装飾的な動物像がつけられた。それらの武器や鹿が彫りこまれた人間像(鹿石)はモンゴル高原や中国北部でも発見されている。スキタイ文化の起源の一つとも考えられる。

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