カラフトマス(その他表記)pink salmon
Oncorhynchus gorbuscha

改訂新版 世界大百科事典 「カラフトマス」の意味・わかりやすい解説

カラフトマス (樺太鱒)
pink salmon
Oncorhynchus gorbuscha

サケサケ科サケ属の魚。北アメリカのカリフォルニア州,サハリン,朝鮮半島北部にわたる北太平洋沿岸水域に広く分布している。体背部は緑がかった青色腹部銀白色で,うろこは細かく,尾びれには比較的大型の黒色斑点がある。幼期にサケ科でよく見られるパー・マークparrmarkが本種では認められない。生後満2年で成熟し,3年にわたるものはまれである。産卵期は,7~8月ころから河川に遡上(そじよう)し始め,10月までに産卵を終わる。海にいるときは銀白色であるが,成熟するにつれ茶褐色を帯びる。雄は鼻先が突き出て下方に大きく湾曲し,背びれの前方が著しく高くなり側扁する。別名セッパリマス背張鱒)の由来である。雌はやや体が肥大する。産卵数は1200~1800である。孵化(ふか)後稚魚は34~36mmに達すると速やかに川を下るが,しばらくは河口汽水域に生息する。北洋漁業マスとよばれているのは本種である。サケ類中では小型で全長約50cm程度である。肉は桃色で,ベニマスやサケに比べ味が劣り,缶詰,塩蔵,薫製にする。なお,日本で出回っているサケ缶の大半はカラフトマスを使用している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カラフトマス」の意味・わかりやすい解説

カラフトマス
からふとます / 樺太鱒
pink salmon
[学] Oncorhynchus gorbuscha

硬骨魚綱サケ科の魚。サケ属中もっとも分布が広く、産卵場の南限は朝鮮半島北部、北海道、カリフォルニア州のラシアン川、北は北極海のレナ川からマッケンジー川の間、千島列島アリューシャン列島を含めて分布する。体の背面が鮮青色を帯びるのでアオマス、また産卵期の雄の背面が甚だしく隆起するのでセッパリマスともよばれる。英名はピンクサーモンで、これは肉色に由来する。卵巣は橙赤(とうせき)色である。夏から秋に遡上(そじょう)した親魚は川の中・下流、ときには河口部で産卵し、春に孵化(ふか)して浮上した稚魚はすぐ降海する。一冬を海で過ごし、春になると母川に向かうが、その途中急速に成長しつつ成熟を進める。かならず2年で生活史を終えるため、偶数年と奇数年級群の間に遺伝子の交換はなく、両者の豊度が異なる場合隔年の豊凶が生じる。カラフトマスは北洋漁業の対象魚としてだけでなく、春に日本海沿岸と三陸沿岸、北海道東岸沖を北上するものを対象にした沖合漁業も重要である。缶詰に適するが、塩蔵品にもされる。

[石田昭夫]


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百科事典マイペディア 「カラフトマス」の意味・わかりやすい解説

カラフトマス

サケ科の魚。サケ類中では小型で全長50cmほど。産卵期の雄は頭に近い背部が著しく隆起するのでセッパリマス(背張鱒)ともいう。北太平洋に広く分布。第2次大戦以前には塩マスとして最も安い魚であったが,近年はピンクと称し,特に缶詰が喜ばれる。
→関連項目サケ(鮭)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カラフトマス」の意味・わかりやすい解説

カラフトマス
Oncorhynchus gorbuscha; pink salmon; humpback salmon

サケ目サケ科の魚。体長 60cmに達する。体の上方は淡青色,下方は銀白色で,背部の後方,尾鰭に数多くの黒点がある。雄は生殖期になると背中がふくれて曲がるので,セッパリマス (背っ張りマス) とも呼ばれる。北海道東部やサハリン島 (樺太) 周辺に分布する。

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栄養・生化学辞典 「カラフトマス」の解説

カラフトマス

 [Oncorhynchus gorbuscha].ピンクサーモン,セッパリマスともいう.日本で一般にマスといわれる.全長60〜70cmになる.

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