カラ・アザール(読み)からあざーる(英語表記)kala-azar

翻訳|kala-azar

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カラ・アザール」の意味・わかりやすい解説

カラ・アザール
からあざーる
kala-azar

リーシュマニア症の一種で、内臓リーシュマニア症ともいう。住血鞭毛(べんもう)虫類に属するドノバンリーシュマニアLeishmania donovaniによって主として脾臓(ひぞう)や肝臓などの網内細胞系および骨髄が侵され、流行地では6歳以下の小児に多くみられる全身感染症である。カラは黒い、アザールは病気を意味するアッサム地方の土語で、黒熱病、熱帯脾腫(ひしゅ)、ダムダム熱、アッサム熱など、流行地によっていろいろの呼び名がある。ドノバンリーシュマニアは、イギリスの軍医で病理学者でもあったリーシュマンSir W. B. Leishman(1865―1926)がインド駐在中に1900年発見、03年に副官のドノバンCharles Donovanが立証し、確認された。

 カラ・アザールはサシチョウバエ媒介によって患者または病犬などから伝播(でんぱ)される。分布は地中海、カスピ海沿岸、東部アフリカ、インド、中国、南アメリカにわたる。潜伏期は不定であるが通常は2、3か月で、初発症状は急性上気道炎、消化器症状で始まることもあるが、不定の発熱以外に症状のないこともある。リーシュマニア侵入の直接刺激または副腎(ふくじん)皮質不全に伴って皮膚メラニン色素沈着により黒くなる。出血傾向のある例では点状出血や紫斑(しはん)をみることもある。脾腫は著明で臍部(さいぶ)(へそ)に達することもあるが、肝腫は中等度で柔らかい。一般的治療として高タンパク食とビタミン剤を投与する。特効薬には五価アンチモン剤があるが、無効の場合にはジアミジン系のペンタミジンなどを用いる。

[松本慶蔵・山本真志]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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