バラ科(APG分類:バラ科)の落葉高木。中国名は榠樝。高さ7~10メートル、径35センチメートルになる。樹皮は緑褐色、滑らかで、薄片になってはげ、落ちたあとが雲紋状になる。葉は互生し、倒卵形ないし楕円(だえん)状卵形、長さ3~8センチメートル、先はとがり、基部は円く、縁(へり)に細鋸歯(さいきょし)がある。裏面は主脈に軟毛があり、葉質はやや堅い。4、5月、淡紅色で径3~3.5センチメートルの5弁花を枝先に単生する。花弁は楕円形、萼筒(がくとう)は倒円錐(とうえんすい)形で毛がなく、萼裂片は5枚で反り返り、内面に綿毛がある。雄しべは約20本で花弁より短い。花柱は3~5本あり、基部は合着して毛がある。果実は楕円形ないし倒卵形、長さ約10センチメートルのなし状果となり、秋に黄色に熟し、平滑で芳香がある。中国中部原産で、平安時代には日本に渡来していたという。適湿地でよく育ち、耐寒性があり、剪定(せんてい)もでき、盆栽、庭園樹にする。繁殖は実生(みしょう)、挿木、取木もするが、実生台に接木(つぎき)すると開花、結実するのが早い。果肉は堅くて酸味と渋味があって生食はできないが、氷砂糖を入れた焼酎(しょうちゅう)に漬けてカリン酒をつくり、砂糖と生薑(しょうきょう)(ショウガ)をともに煮つめた汁を固めて「かせいた」という菓子にする。また、輪切りにして砂糖とともに煎(せん)じて、鎮咳(ちんがい)、利尿の薬にする。材は心材が暗紅褐色で美しく、堅くて粘り強いので、床柱、家具、彫刻などに使われる。
名は、材の木目が東南アジアに産するマメ科のカリン(花櫚)に似ているからという。長野県などでカリンと称して生食したり、菓子、ジャムなどにするものは、果実の表面に綿毛のあるマルメロである。
[小林義雄 2019年12月13日]
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