カルカソンヌ(その他表記)Carcassonne

デジタル大辞泉 「カルカソンヌ」の意味・読み・例文・類語

カルカソンヌ(Carcassonne)

フランス南部、オクシタニー地方オード県県都。古くから交通要衝で、古代ローマ時代に建設された要塞都市に起源する。13世紀に隣国アラゴン王国に対する防御のため、さらに城壁が築かれたものの、17世紀に国境が定まってからは軍事上の意味を失った。19世紀に城壁は修復され、1997年に「歴史的城塞都市カルカソンヌ」の名称世界遺産文化遺産)に登録された。カルカッソンヌ

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改訂新版 世界大百科事典 「カルカソンヌ」の意味・わかりやすい解説

カルカソンヌ
Carcassonne

フランス南部,オード県の県都。オード川ミディ運河に面し,トゥールーズの南東90kmに位置する。人口4万5000(1990)。地中海大西洋を結ぶ交通上の要衝で,その地理的位置の重要性は古代から認められ,前1世紀以来ローマ帝国の属州ナルボネンシスの要塞都市が建設されていた。5世紀には西ゴート族,8世紀初頭には一時イスラム勢力の占拠するところとなったが,のちフランク族の支配下に入った。その後400年トゥールーズ伯支配下の伯爵領,子爵領として栄えた。13世紀異端者懲罰を目的としたアルビジョア十字軍(1208-14)によってフランス王家とトゥールーズ伯との争いの舞台となり,1247年フランス王家に属した。

 町は二つの部分から構成される。シテと呼ばれるオード川右岸丘陵上の都市は古代に起源をもち,13世紀初頭の破壊ののちルイ9世,フィリップ3世によって復旧,補強された。その後,軍事上の意義が失われ,城塞都市は荒廃の一方であったが,19世紀になって,作家で歴史家のメリメの進言に基づいてその歴史的意義が認められ,美術史家ビオレ・ル・デュクがもとの姿に復元した。シテは城館を囲む城壁を含めると三重の厚い城壁に囲まれ,外壁の周囲は1kmに及び,今日ヨーロッパに残された最大の城塞都市として知られる。全部で50以上に及ぶ櫓(やぐら),その間をつなぐ重厚な城壁そして狭間(はざま)や胸墻(きようしよう)などは,中世の戦闘場面を彷彿とさせる。シテから見下ろす対岸の都市は,現代カルカソンヌ市の活動の中心であるが,これがアルビジョア十字軍によるカルカソンヌ破壊後,シテの避難民のためにルイ9世によって建設されたニュータウンである。今日市の中心部を囲む大通りは,かつての城壁の跡であり,今日でもその姿を一部とどめている。変形六角形をした城壁の中は直交する東西南北の通りで方格状に仕切られており,計画都市のプランは今日そのままに残されている。丘陵上の古代に起源をもつ城塞都市,そして中世の建設都市という二つの都市の存在は,カルカソンヌを都市史上重要なものとしている。現代カルカソンヌ市は,オード県のブドウ産地の中心として,行政・商業の中心であり,工業活動はあまり盛んでなく,人口停滞の原因ともなっている。
執筆者: シテにあるサン・ナゼール旧大聖堂は,ロマネスク様式の身廊とゴシック様式の内陣が結合され,13世紀末南フランスに北方ゴシック様式が浸透してゆく過程を示す重要な建築である。西側ファサードは,ビオレ・ル・デュクにより修復された。青を主調としたステンドグラス(13~14世紀)は南フランスの貴重な作例。他の諸教会も南フランスのゴシック建築特有の,幅広の単一身廊を持つ。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カルカソンヌ」の意味・わかりやすい解説

カルカソンヌ
Carcassonne

フランス南部,オード県の県都。オード川とミディ運河に臨む都市。楕円形の城壁に囲まれた中世の町並みを保存していることで知られる。オード川左岸に 13世紀につくられた,道路が規則正しく直交する町並みと,急崖に囲まれた右岸の史跡の「シテ」とに分かれている。前1世紀にローマ人がここに要塞を築き,5世紀には西ゴートの支配下で城下町が発達,ローマ街道が通じて商業も徐々に発展した。8世紀前半のサラセン人による占領を経て 13世紀にはアルビジョア十字軍の戦いの舞台となり,ローマ教皇,フランス国王,地方諸侯など,それぞれの政治的,軍事的思わくの対象となったが,結局中央政府に属し,地方の行政,軍事の中心地の一つとなった。周囲約 1500m,堅固さで知られる城壁などは,19世紀半ばに史跡監督官の職にあった P.メリメの努力により,建築家ビオレ=ル=デュクの修復が実現し廃墟となるところを免れた。町にはミシェル大聖堂,聖バンサン聖堂 (ともに 13世紀) などがあり,産業の中心は観光業。 1997年世界遺産の文化遺産に登録。ワインの取り引きの中心地で,ゴム,繊維などの工業も発達。人口4万 4991 (1990) 。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カルカソンヌ」の意味・わかりやすい解説

カルカソンヌ
かるかそんぬ
Carcassonne

フランス南部、オード県の県都。カルカッソンヌともいう。人口4万3950(1999)。ローマ時代に軍事基地として建設された古い町で、この地域の観光の中心地。シテとよばれる古い町と下町とが、オード川を挟んで立地する。右岸の丘の上にある古い町は、約60の塔をもつ12~13世紀建設の城壁に囲まれ、典型的な中世都市の姿をいまにとどめている。1997年には「歴史的城塞(じょうさい)都市カルカソンヌ」として世界遺産の文化遺産に登録されている(世界文化遺産)。城壁の基部には西ゴート時代のものも残るが、これは19世紀に修復された。シテのサン・ナザレ聖堂はロマネスク・ゴシック式建築として有名である。また対岸の下町は13世紀のルイ9世の時代に建てられた。工業はあまり発達していないが、毛織物、皮革製品、ワインを産する。

[青木伸好]


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百科事典マイペディア 「カルカソンヌ」の意味・わかりやすい解説

カルカソンヌ

フランス南部,オード県の県都。オード川右岸にある中世の囲郭都市,左岸に商工業区と住宅区があり,城壁の中には12世紀の城,ゴシック風ロマネスクの教会がある。1997年世界文化遺産に登録。毛織物とブドウ酒の産地としても有名。4万3470人(1990)。

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