アフリカ大陸西岸沖のベルデ岬諸島を占める共和国。ベルデ岬の西方500キロメートルの大西洋上の15の島からなる。正称はカーボベルデ共和国República de Cabo Verde。面積4033平方キロメートル、人口48万3000(2006推計)、50万6000(2009推計)。人口密度は1平方キロメートル当り125人と比較的高い。国民の大部分はポルトガル人とアフリカ系住民の混血であり、主産業はバナナやサトウキビの栽培と水産業である。1人当り国民総所得(GNI)は3130ドル(2008)。ともに独立闘争を闘ったギニア・ビサウとの国家統合を政策に掲げてきたが実現していない。首都はサン・ティアゴ島のプライアで人口12万3700(2008推計)。
[藤井宏志]
ベルデ岬諸島15島のうち人の住む島は9島で、最大の島はサン・ティアゴ島(面積991平方キロメートル、人口23万6352。2000)、最小はブラバ島(面積67平方キロメートル、人口6820。2000)である。北端のサント・アントン島から南端のブラバ島まで、西方に開いた半径150キロメートルの半円形に並び、北半弧の群島をバルラベント群島(北東貿易風の風上の意)、南半弧の群島をソタベント群島(風下)とよぶ。いずれも大陸棚上の火山島で、標高は1000~2000メートルと高く、フォゴ島にあるこの国唯一の活火山は標高2829メートルに達する。気候には、群島を洗いながら南下するカナリア海流(寒流)と、サハラ砂漠からの風が大きな影響を与える。気温は1年を通じて22~30℃と高温ながらしのぎやすいが、年間を通じて下降気流があるため夏季を除いて降水量が少なく(プライアの年降水量270ミリメートル)、干魃(かんばつ)の害の出ることが多い。樹木も少なく植生は貧弱である。
[藤井宏志]
15世紀なかばポルトガルの航海者がヨーロッパ人として初めて到達し、ポルトガル王直轄領となり入植が開始された。奴隷貿易時代にはヨーロッパ、アフリカ、南北アメリカのそれぞれを結ぶ中継地として栄え、サン・ビセンテ島のミンドロは補給港として知られたが、汽船の時代になると衰退した。また、ポルトガル領ギニアから移入したアフリカ系住民の労働力で綿花、コーヒーなどのプランテーションが開かれた。第二次世界大戦後の1951年ポルトガルの直轄領から海外州となり、政府協議会と立法協議会によって選ばれた知事が統治にあたり、公認政党は国民同盟(UN)だけであった。1956年カーボベルデ出身の農学者アミルカル・カブラルがギニア・カーボベルデ独立アフリカ党(PAIGC)を結成、圧制と貧困からの脱却を求める民族主義者たちは、これに参加し武装闘争に乗り出した。1974年4月ポルトガル本土の民主化クーデターが成功したのを機に闘争が前進し、カーボベルデでは同年12月のポルトガルとPAIGCの双方からなる暫定政府の樹立を経て、1975年7月5日独立を達成した。初代大統領にはアリスティデス・ペレイラ、首相にはペドロ・ピレスが就任し、PAIGCを唯一の合法政党とする共和国が発足した。独立以来ギニア・ビサウとの国家統合策が進められたが、人種、宗教、思想などの相違があってまとまらず、1980年11月ギニア・ビサウの統合推進派カブラル元首がクーデターで失脚したことにより、統合問題は後退した。また、1981年1月にはギニア・ビサウとの共通支配政党であるPAIGCを、カーボベルデ独自の政党カーボベルデ独立アフリカ党(PAICV)に改組した。
[藤井宏志]
1990年代に入り、民主化、市場経済化が図られ、複数政党制を導入し、1991年総選挙で野党の民主運動党(MPD)が圧勝、同党が大統領、首相を出した。議会は一院制で、1995年総選挙ではMPDが72議席中52議席を占めた。しかし2001年1月に行われた総選挙ではPAICVが40議席を獲得し、勝利をおさめた。同年2月の大統領選挙でも、PAICVのピレスが当選した。2006年1月の国民議会選挙でもPAICVが勝利、同年2月の大統領選挙もピレスが勝利し大統領に再選された。憲法の大統領三選禁止に従い、ピレスは2010年に引退することを表明、元大佐アンテロ・マテスがアドバイザーに任命された。外交は非同盟政策で欧米との関係も良好である。軍事は選抜徴兵制で陸海空三軍1200人。
農業と水産業が主要産業であるが、農業は年降水量が150~300ミリメートルと少ないため生産性が低い。商品作物としてコーヒー、サトウキビ、バナナ、自給作物としてトウモロコシ、キャッサバ(南米原産の根茎作物。根を食用とし、タピオカの原料となる)、ジャガイモ、サツマイモ、豆などが栽培され、牧畜も行われる。食糧自給率は10%程度で、多くを輸入に依存する。農家の54%が1ヘクタール以下の耕作面積で、小作人が多い。ポルトガル人経営の農場は国有化されたが、うまく運営されているとはいえない。限られた降水量と地下水利用のため、ダム建設と井戸掘削が計画されている。水産資源は豊富だが、伝統的漁法に頼り、近代的な漁船はまだ少ない。マグロ、ロブスターがとれる。工業人口は2%しかなく、製塩、食料品工業がおもなものである。輸出品目は水産物、バナナ、塩、輸入品目は小麦、ミルク、食用油、トウモロコシ、豆などの食料品である。貿易相手国はポルトガルが60%を占め、オランダ、スペイン、コートジボワールがこれに次ぐ。貿易収支は輸入超過である。70万人の海外移住者の送金と外国からの援助が経済を支えている。サル島、サン・ティアゴ島の国際空港がリスボンやアフリカ、アメリカと結んでおり、国内便もここを起点としている。最近は外国人観光客受け入れに力を入れている。「シダーデ・ヴェリヤ、リベイラ・グランデの歴史都市」がユネスコの世界遺産(文化遺産)に登録されている。
[藤井宏志]
住民はアフリカ系(30%)と、アフリカ系住民とポルトガル人の混血(70%)からなる。公用語はポルトガル語であるが、一般には部族語化したクレオール語を用いる。宗教はほとんどがカトリックの信者であり、文化や生活面でもポルトガル化が著しい。近年人口が増加し移民に出る者が多い。日本からは漁業技術協力を中心にした無償援助が行われている。
[藤井宏志]
『小川了編著『セネガルとカーボベルデを知るための60章』(2010・明石書店)』
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