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ガス化学工業 ガスかがくこうぎょう

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百科事典マイペディアの解説

ガス化学工業【ガスかがくこうぎょう】

広くは天然ガス,製油所廃ガス,高炉ガスなどの反応過程を主体とする化学工業の一分野であるが,通常は天然ガスを原料とするもののみをさす。米国では大量の構造性ガスを産出し,石油化学工業の重要な原料となっている。
→関連項目有機化学工業

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世界大百科事典 第2版の解説

ガスかがくこうぎょう【ガス化学工業】

ガスを原料とする化学工業のことであるが,一般には,天然ガスを原料として有機化学工業中間原料であるメタノール(メチルアルコール),アセチレンアンモニアなどを製造する分野をいう。ガス化学工業という分類は日本特有のものである。アメリカでは,石油化学工業の主要な原料がそもそも天然ガスや石油精製工業の副生ガスであり,わざわざガス化学工業とは呼ばない。日本は天然ガスの産出量が少なく,これを利用する工業がきわめて特異な存在であったことや,日本の天然ガスがメタン主成分とし,アメリカのようにエタンプロパンを含んでいないので,メタン系の工業しか成り立たなかったこと,などの要因によって,特別な呼び方をするようになったと思われる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ガス化学工業
がすかがくこうぎょう

化学工業では通常、ガス、液体、粉体のような流体が原料となる場合が多い。このうち、原料がガスで、化学反応がガス反応となるような化学工業が広くガス化学工業とよばれる。亜硫酸ガスを処理する硫酸工業、窒素ガスと水素ガスを反応させるアンモニア合成工業、さまざまな炭化水素ガスを処理する石油化学工業も、広い意味のガス化学工業の範疇(はんちゅう)に属するものであるが、狭い意味では、石油化学工業とともにおこった天然ガス化学工業をさす。天然ガスを原料としてつくられるおもなものは、アンモニア、メタノール(メチルアルコール)、アセチレンなどである。
 アンモニアは、ハーバー‐ボッシュ法以来、水素3容、窒素1容を高温・高圧下で触媒を用いて反応させてつくる。窒素は空気中に無限に存在するから、アンモニアの原料というのは水素である。従来は水の電気分解やコークスから得られる水性ガスが用いられたが、昭和30年代からアンモニア・ガス源の急速な転換がおこり、原油、ナフサ、天然ガスを原料とするようになった。この転換は日本の化学工業史のなかでも特筆すべきできごとであった。
 天然ガスは通常大部分がメタンであり、これと水蒸気との混合ガスを加熱すると一酸化炭素と水素ガスとに分解する。この分解混合ガスを処理して水素ガスを取り出し、アンモニアのガス源とすることができる。また、テキサコ法では天然ガスの不完全酸化による方法で水素ガスを採取する。
 このようなガス源転換は、アンモニア合成の歴史のなかでハーバー‐ボッシュ法以来もっとも大きな技術的改良といわれる。水の電解や石炭系原料を使用するものが天然ガスや石油を原料とする方法に転換して工程が簡易化され、自動化・連続化が容易となり、装置建設費、原料費、動力費が大幅に低下した。
 メタノールは、炭酸ガス1容、水素ガス2容を反応させて合成されるが、この原料ガスは旧来法ではコークスからの水性ガスから得られていた。しかし、アンモニアのガス源転換と同様に、これも石油化学系の工業分野に転化し、昭和30年代以降は天然ガスを原料とするようになった。メタンと炭酸ガスおよび水蒸気の混合ガスを高温・高圧で触媒を通じて反応させるとメタノールが得られる。
 アセチレンは、かつては石炭化学系の有機合成化学工業の基幹原料であり、従来は電気化学工業の製品であるカーバイドから得られた。しかし、石油化学工業の勃興(ぼっこう)とともにアセチレンの基幹的位置はエチレンによって代替され、しかもアセチレンの製造そのものもカーバイド法から天然ガスを原料とするものに転換した。電弧法またはザクセ法によってメタンは熱分解されてアセチレンに転化する。
 以上のように、狭義のガス化学工業においては、天然ガスを原料としてアンモニア原料ガス、メタノール、アセチレンなどが製造され、石油化学系有機合成工業の一角を占めている。メタノールは多くホルマリンの製造に消費され、ホルマリンはフェノール、尿素、メラミンなどとともに合成樹脂の原料となる。またアセチレンは、重要な中間原料であるアセトアルデヒドの原料となり、それはさらに酢酸、ブタノールの製造に使用される。あるいはアセチレンからはそのほか、合成ゴム・ネオプレンの原料であるクロロプレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル(アクリル繊維の原料)など、有機合成化学工業で重要な位置を占める薬品類が数多くつくられる。
 日本で、天然ガスを原料とするメタノール製造を初めて行ったのは1952年(昭和27)新潟県の日本瓦斯(ガス)化学工業(現、三菱瓦斯化学)で、同社は1956年に天然ガスからのアンモニア製造も実施している。東洋高圧工業(現、三井化学)も1958年以降、メタノール、アンモニアの分野に進出し、天然ガス化学工業は石油化学工業とともに成長し、また停滞も同じように経験している。
 第二次オイル・ショック(1979)後は、石油価格の高騰を背景として、石油にかわる炭素資源、とくに合成ガス(水素と一酸化炭素の混合ガス)を原料とする合成化学(C1化学)が注目されるようになった。1980年ごろからはGTL(Gas To Liquid)法、すなわち、合成ガスからエタノール、酢酸、アセトアルデヒド、スチレングリコールなどの基幹原料をつくりだす技術、また、反応性の乏しいメタンからベンゼン、ナフタレンなどの芳香族炭化水素を合成する方法の研究が進行し、日本鋼管(現、JFEスチール)と太平洋炭礦(たんこう)によるジメチルエーテル製造など実施に移されるものも現れた。しかし、メタンを直接液状炭化水素に化学変換する化学技術の実用化は今後の課題といえよう。
 天然ガスは埋蔵量が多く、また、硫黄(いおう)や窒素分の含有が少ないためクリーンな炭素資源として、石油にかわって有機合成化学工業の基幹原料をつくり得る資源として今後期待される。
 21世紀に入って地球温暖化への対策が大きな課題となり、クリーンな燃料である水素を利用した燃料電池が注目を集めるようになった。燃料電池とは、水素を酸素と電気化学的に反応させて電気を得るもので、水の電気分解の逆の反応を利用するものである。
 水素はさまざまな方法によってつくられるが、天然ガスの主成分であるメタンの改質によるものが有力である。従来から実施されているものとしては、水蒸気改質、部分酸化改質、オートサーマル改質がある。これらのなかで、メタンに水蒸気を作用させて水素を得る水蒸気改質が主流であった。これは安価に高濃度の水素を得る方法であるが吸熱反応であるため外部から熱を供給しなければならない。これに対し、メタンを酸素と反応させる部分酸化改質では発熱反応であるためエネルギー効率は改善される。この両者の方法のメリットを備えた改質法がオートサーマル改質である。これは原料ガスを部分的に燃焼させながら水蒸気改質を行うものであり、触媒などに関する研究開発が盛んに行われて改良の努力が続けられている。
 燃料電池は車の電源や家庭用電源、業務用分散電源として使用することができ、炭酸ガスや有害な廃棄物をほとんど排出しない。水素社会の到来に向けて、低コストの水素を安定的に供給できるシステムの構築が期待される。[馬場政孝]

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