膜電極(膜電位)の一種で,おもにpHの電気化学的測定に用いられる。水素イオン濃度がそれぞれcAおよびcBの2種の溶液AおよびBを,うすいガラス膜をへだてて接触させると,両溶液間に電位差Eが生ずる。この電位差とcAおよびcBとの間には
E=a+b log(cA/cB)
(a,bは温度,圧力,電極の種類などできまる定数)の関係が成立する。したがって,もしcAが既知であれば,Eの測定値からcBを知ることができる。ガラス電極の構造は,図のように,先端にガラス膜をつけたガラス管の中に既知濃度の塩酸水溶液を入れ,その中に銀-塩化銀電極や甘汞電極(かんこうでんきよく)を挿入したものである。実際にpHを測定するには,図に示すように,ガラス電極と適当な基準電極とを被測定溶液中に挿入して電池を作り,その起電力を内部抵抗の高い電圧計や電位差計で測定する。この目的に用いるガラス電極は,その電位差Eが水素イオン濃度だけの関数で,他の共存物質には無関係である(水素イオン選択性が高い)こと,またガラス膜の電気抵抗ができるだけ低く,機械的に丈夫なことが重要である。これらの条件を満足させるために,ガラスの組成などに多くの工夫が行われている。ガラス電極によるpH測定法の利点は次のとおりである。(1)測定できるpH範囲が広い,(2)被測定溶液が着色していたり,懸濁したコロイド状であっても差支えない,(3)ごく小型で丈夫なガラス電極が開発されたので生体内組織のpHなども測定できる。また最近は,水素イオンに応答するもののほかに,ナトリウムイオンやリチウムイオンなどに特異的な選択性をもつガラス電極も実用化されている。
執筆者:玉虫 伶太
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
特定組成のガラス薄膜を使ったpH測定用の代表的な電極.十分に薄いガラス膜は,水素イオンを選択的に通過させる性質を示す.水素イオン濃度の異なる2液をガラスの薄膜で隔てると,2液の pH の比に応じた膜電位が現れる.したがって,一方の液の pH がわかっていると他方の液の pH を求めることができる.実際のpH測定に用いられる電池の構成は,たとえば次のようなものである.
ガラス膜を通して得られる電位と溶液Ⅱの pH との間に直線関係があるが,pH 1以下および pH 10以上では,この直線からの偏移が起こり,それぞれ酸誤差およびアルカリ誤差といわれる.また,通常のガラス膜には不斉電位とよばれる現象,すなわち,上記の電池においてⅠとⅡにまったく同じ溶液を用いても電池の平衡電圧は,わずかではあるがゼロと異なる値を示すという現象がある.そのうえ,電池の溶液ⅡとⅢの間には多少なりとも液間電位差が存在する.したがって,不斉電位や液間電位差を補正するため,実用的には,電池の溶液Ⅱに pH の定義された標準溶液を用いてガラス電極系を較正する方法が用いられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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