日本大百科全書(ニッポニカ) 「キイロショウジョウバエ」の意味・わかりやすい解説
キイロショウジョウバエ
きいろしょうじょうばえ / 黄色猩々蠅
[学] Drosophira melanogaster
昆虫綱双翅(そうし)目短角亜目ハエ群ショウジョウバエ科に属する昆虫。この科の昆虫は、体長、翅長とも2~2.5ミリメートルで、体は黄褐色。野生種の複眼は、生時は赤色なので、アカメともよばれる。触角は短いが、触角刺毛は長い羽毛状で、背方には5本、下方には3本の分枝がある。胸部背面にはやや光沢があり、黒色の短い微毛が多い。はねは透明で斑紋(はんもん)はない。前脚第1跗節(ふせつ)の末端には、雄では約10個の黒色の剛毛よりなる性櫛(せいしつ)をもつ。腹部背面各節の後縁には黒褐色の横帯があり、その幅は後方の節のものほど太くなる。成虫は過熟の果物、ぬかみそ、酒類などの発酵物に集まり、幼虫は酵母菌を食べて生育する。人家の付近や醸造工場の付近に多い。飼育が簡単で、環境条件がよければ年間に25~30回もの累代飼育が可能である。染色体数が8個と少なく、巨大な唾液腺(だえきせん)染色体もみられるほか、諸種の形質の発現が顕著であるため、遺伝学の研究や学習の好材料として用いられている。
[伊藤修四郎]