キクモ(読み)きくも

改訂新版 世界大百科事典 「キクモ」の意味・わかりやすい解説

キクモ (菊藻)
Limnophila sessiliflora Bl.

水田や浅い沼などに生えるゴマノハグサ科の多年草。和名は,水生で細く裂けた葉がキクの葉を思わせるところからついた。細い裂片に裂けた葉が輪生し,夏,水上に直立する茎に紅紫色の花をつける。地下茎は泥中をはい,水中の茎は長さ20~60cm,5~10cmほどの水上に直立する茎は,密に軟毛が生える。葉は,水中葉のほうが水上葉より細い裂片に裂けている。花は花柄がなく,唇形花冠をもち,長さ約9mm,4本の内在するおしべがある。果裂は卵円形,室の背面が縦に裂け,多くの種子を散らす。本州の宮城県以南,四国,九州から東南アジア,インド,オーストラリアの暖帯から熱帯にかけて分布する。

 近縁のコキクモL.indica(L.)Druceは,日本ではまれにしか見られないが,花に柄があり,全体無毛である。シソクサL.aromaticaLam.)Merr.は白色の花をもつ直立する一年草で,全体に油細胞があり,シソの香りがする。関東以西から東南アジアに広く分布し,マレーシア地域では食用にされる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「キクモ」の意味・わかりやすい解説

キクモ
きくも / 菊藻
[学] Limnophila sessiliflora Bl.

ゴマノハグサ科(APG分類:オオバコ科)の多年生水草。茎は水中に漂い、長さ20~60センチメートル、軟毛があり、先は水上に立ち上がる。葉は4~8枚輪生し、水中葉は糸状に細く裂け、水上葉は裂片の幅がより広い。夏、水上葉のわきに柄のない花をつける。花冠は唇形で紅紫色、長さ約9ミリメートル。宮城県以西の本州から沖縄の水田や浅い池に生え、朝鮮半島、中国、東南アジア、インドに広く分布。名は、葉の形がキクを思わせるのでいう。

山崎 敬 2021年8月20日]

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百科事典マイペディア 「キクモ」の意味・わかりやすい解説

キクモ

本州〜沖縄,東アジアの沼や水田などの浅い水の中にはえるゴマノハグサ科の多年草。地下茎は泥中をはい,茎は長さ10〜30cm。葉は5〜8枚輪生し,水上の葉はキクの葉に似て裂片が細く,水中のものはさらに細く糸状に裂ける。夏〜秋,水上葉の腋に1花をつける。花冠は唇形(しんけい)で長さ約9mm,紅紫色。

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