ギリシアの神話,伝説中の巨人。複数形はキュクロペスKyklōpes。ホメロスの《オデュッセイア》によれば,彼らは単眼の巨人族で,法も耕作も知らず,羊を飼って暮らしていた。彼らの住む島(シチリア島?)に着いたオデュッセウスとその部下がポリュフェモスPolyphēmosという名のキュクロプスの洞穴に迷いこみ,部下がつぎつぎと食われていったとき,オデュッセウスの計略で巨人の眼をつぶして逃れた話は有名。一方,ヘシオドスの《神統記》によれば,彼らは天空神ウラノスと大地女神ガイアの3人の息子ブロンテスBrontēs(雷鳴),ステロペスSteropēs(電光),アルゲスArgēs(閃光)とされ,父の手で地底に幽閉されたが,のちゼウスに解放され,クロノス一派と矛を交えたゼウス兄弟の味方となってその勝利に貢献したという。後代のギリシア人は彼らを鍛冶の神ヘファイストスの職人と考え,エトナ火山の噴煙は,彼らの仕事場からのぼる煙と信じた。
執筆者:水谷 智洋
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…その後,敵の予言者ヘレノスから聞き出した情報に基づき,こじきの姿で城内に潜入してパラディオン(アテナ女神像)を盗み出すなど,トロイア陥落の諸要件を満たしたあと,最後に有名な木馬の計を案出,勇士たちが腹中にひそむ巨大な木馬をトロイア人みずからの手で城内に引き入れさせ,ギリシア軍勝利の立役者となった。こうして彼は戦地に10年を送ったあと帰国の途についたが,嵐で漂着した単眼の巨人族キュクロプスの島でその1人を傷つけたため,その父の海神ポセイドンの怒りをうけ,さらなる10年の放浪を余儀なくされた。しかし彼の知謀を愛する女神アテナの援助により身ひとつで故国に帰還,成人した息子テレマコスと再会ののち,留守中ペネロペに言い寄っていた求婚者どもを退治して,妻と王位をわが手に取り戻した。…
…この片目つぶりは顔貌の急激な変化と眼球の消去によって降魔の呪力をもつものともされる。【飯島 吉晴】
[西洋]
ギリシア神話のキュクロプスは西洋の一つ目の典型で,火と鍛冶の神ヘファイストス(ローマのウルカヌス)に職人として仕えた。彼らの荒々しい性質は,洞窟に住み人を食うという理性や法に従わぬ怪物として具体化されるが,同時にこれは火を中心とする自然の創造力と破壊力との象徴と考えられる。…
…数の3が能動,受動とその中間,または創造,保全と破壊を象徴し,シバの神性を示している。他方,1眼の場合は相反する両義をもち,2眼より少ないから人より下等とするかたわら,この1眼が額中央にあればギリシア神話のキュクロプスのように超人的な力をもったり,モンゴル伝承のドア・ソホルのように歩いて3日かかる先まで見える千里眼となる。額のほかに手や腕,胴や翼にある異所性の目も千里眼であることが多く,空想上の動物や天使の姿などに往々描かれている。…
※「キュクロプス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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