ハデス(その他表記)Hadēs

デジタル大辞泉 「ハデス」の意味・読み・例文・類語

ハデス(Haidēs/〈英〉Hades)

ギリシャ神話で、冥府の王。クロノスレアの子。ゼウスの兄。デメテルの娘ペルセフォネをさらって妃とした。ローマ神話プルートーにあたる。ハイデス

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精選版 日本国語大辞典 「ハデス」の意味・読み・例文・類語

ハデス

  1. ( [英語] Hades )
  2. [ 1 ] ギリシア神話中の地下の国の支配者冥界の王。クロノスとレアの子。豊饒(ほうじょう)の女神デメテルの娘ペルセフォネを奪って妃とした。ギリシア名ハイデス。
  3. [ 2 ] ( ハデスの家の意 ) 死の国。冥府。黄泉(よみ)

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改訂新版 世界大百科事典 「ハデス」の意味・わかりやすい解説

ハデス
Hadēs

ギリシア神話で,地下の冥府の王。その名は〈見えざる者〉の意。地中に埋蔵される金銀などの富の所有者としてプルトンPloutōn(〈富者〉)とも呼ばれたところから,ローマ神話ではプルトPluto,またはそのラテン訳のディスDisが彼の呼称となっている。ティタン神族のクロノスの子として生まれ,兄弟のゼウス,ポセイドンと力を合わせて,当時,世界の覇者であった父神とティタン神族を10年にわたる戦いで征服し,ゼウスが天,ポセイドンが海の王となったとき,ハデスは冥界の支配権を得た。のち,みずからの姉妹にあたる女神デメテルの娘ペルセフォネ地上からさらって后とした(図)。

 古代ギリシア人の考えによれば,死者亡霊はまずヘルメスによって冥界の入口にまで導かれ,ついで生者と死者の国の境の川ステュクスまたはアケロン渡し守の老人カロンに渡されたあと,三つ頭の猛犬ケルベロスの番するハデスの館で,ミノス,ラダマンテュス,アイアコスの3判官に生前の所業について裁きを受ける。その結果,多くの亡霊はアスフォデロス(不凋花)の咲きみだれる野にさまようことになるが,神々の恩寵めでたき英雄や正義の人士エリュシオンの野(古い伝承では,はるか西方の地の果て,のちに冥界の一部と考えられた)に送られて至福の生を営む一方,シシュフォスタンタロスのごとき極悪人は地下にある冥界タルタロスの奈落へ押しこめられ,そこで永遠の責め苦にあうものと想像された。
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百科事典マイペディア 「ハデス」の意味・わかりやすい解説

ハデス

ギリシア神話の冥府の王。クロノスとレアの子。プルトン(富める者),あるいはラテン語でプルトPluto,ディスDisとも呼ばれる。ペルセフォネを妻とした。陰気で,容赦なく悪行を罰する。彼の支配する国もハデスと呼ばれ,死者の魂はヘルメスステュクス川まで導き,カロンの渡船でケルベロスが番をするハデスに入って裁きを受ける。冥府は《イーリアス》ではオケアノスの流れのかなたの極西にあるとされ,のち地の深奥にあると考えられた。英雄や義人は楽土エリュシオンに,極悪人は奈落タルタロスに送られるとも。
→関連項目地獄タルタロスプルトン

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハデス」の意味・わかりやすい解説

ハデス
はです
Hades

ギリシア神話の死者の国を支配する神。クロノスとレアの子で、ゼウスとポセイドンの兄弟にあたる。プルトンPluton(富める者の意)ともよばれるが、これは万物を生み育てる大地のもつ富の力を表し、地下の神としてその地下の富を所有することからハデスの別名となった。またローマ神話では、プルトPluto、ディースDis(富の意)などともよばれ、いずれもプルトンに由来する。ハデスにはこのほかにもいくつかの別名があるが、多くの場合、その恐ろしい本名を直接口にするのを避けて婉曲(えんきょく)に暗示するため、これらの別名が用いられた。ハデス(またはアイデス)とは、「目に見えない」の意味と解釈されている。

 ティタン族との戦いでは、有名な隠れ帽子を用いて活躍し、ゼウスが天を、ポセイドンが海を領分にしたように、彼は冥界(めいかい)を獲得した。そして妃(きさき)のペルセフォネとともにミノス、ラダマンティス、アイアコスの3人の判官の補佐を受けて、正義にもとることなく死者の国を支配した。冥府のことを「ハデスの館(やかた)」とか、簡単に「ハデス」ともいうが、その館にはケルベロスという猛犬がいつも番をしており、館の周りにはスティクス、アケロン、コキトス、レテ、ピリプレゲトンの五つの川が流れている。なお、彼には、ペルセフォネを誘拐して妻とする物語のほかには神話らしいものがない。

[伊藤照夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ハデス」の意味・わかりやすい解説

ハデス
Hades

ギリシア神話の神。別名をプルトンともいう地下の死者の国の支配者。クロノスとレアの子で,兄弟のゼウスポセイドンとともにティタンたちとの戦いに勝ったあと,くじを引いて世界を分け合い,冥界の支配権を引当てた。ゼウスがデメーテルに生ませた娘ペルセフォネを,ゼウスの同意のもとに地上からさらってきて妃とし,彼女とともに死者の国に君臨する。キュクロプスたちから贈られた,かぶると姿の見えなくなる兜を所有するという。

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世界大百科事典(旧版)内のハデスの言及

【ギリシア神話】より

…ウラノスの呪いとともに天界の主権は子クロノスに移る。彼は姉レアを妻としてヘラを含む3人の女神と3男神ハデス,ポセイドン,ゼウスを生む。彼らはいずれもオリュンポス十二神に数えられる。…

【地獄】より

…たとえばコリントスの邪悪な王であったシシュフォスが堕(お)ちた世界がそれで,彼は石を山頂まで転がしていく作業を永久に続けなければならなかった。ギリシアではこのような地獄を一般にハデスとよび,神名ともなっているが,のちにキリスト教において発達をみた地獄は,ゲヘナである。また新約聖書にはゲヘナのほかにギリシア以来のハデスの語も用いられているが,これはもっぱら死者の霊の赴くところとされ,ゲヘナが悪しき者に永遠の刑罰を加える場所とされているのと好対照をなしている。…

【タルタロス】より

…ゼウスは打ち負かしたティタン神族をここに閉じ込めた。冥界としてはハデスの観念が有力になるにつれ,その最奥の一部とされたり,これと同一視されるにいたった。【辻村 誠三】。…

【ペルセフォネ】より

…ギリシア神話で,冥府の王ハデスの妃。ゼウスと穀物豊穣の女神デメテルの娘。…

※「ハデス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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