メートル法および国際単位系(SI)の質量の基本単位。国際キログラム原器の質量と定義されている。記号はkg。国際キログラム原器は、高さおよび直径がそれぞれ39ミリメートルの円柱形の分銅で、材質は白金90%、イリジウム10%の合金である。メートル法創設当時の計画では、1立方デシメートルの最大密度の水の質量とする予定であったが、1880年、最初につくられた原器はやや重くできてしまった。しかし水の密度の測定精度にも問題があるので、国際的なキログラムは、この最初の原器に基礎を置くということになり、1885年新しい原器がいくつかつくられ、そのうち最初の原器と一致したものが国際キログラム原器とされた。そのほかのものはこの国際原器と比較され、各国の原器として配布されている。
キログラムは基本単位でありながら、1000を意味する接頭語がついている。これは、最初はグラムを基本単位とする計画であったからで、原器がその1000倍につくられたため、キログラムを単位としてしまった。そこで国際単位系では、キログラムにはさらに接頭語をつけず、グラムにだけつけると定めている。
[小泉袈裟勝・今井秀孝]
メートル法の質量の単位。1000gを意味し,記号はkg。その大きさの定義には次のような変遷があった。1795年にフランスでメートル法が初めて制定された際,質量の基本単位はグラムであり,そのグラムの定義から換算して,キログラムは〈最大密度にある蒸留水1立方デシメートルの質量〉であった。この定義に基づいて白金製の円柱型分銅が99年に作られたが,これは上記定義のキログラムの大きさを最も精密に表す分銅であり,その保管場所の国立史料館Archives nationalesの名を付けてキログラム・デ・ザルシーブという。
メートル法の国際化のため,国際メートル委員会が1870年と72年に開かれたが,そこで新しい国際原器をキログラム・デ・ザルシーブが実際に示す真空中の質量から導くことが決議された。キログラム原器は80年に完成し,その質量はキログラム・デ・ザルシーブの質量と体積測定の誤差の範囲内で一致した。1875年制定のメートル条約に基づいて89年に開かれた第1回国際度量衡総会はこのキログラム原器を承認し,〈今後,この原器が質量の単位と見なされる〉と決定した。この原器を国際キログラム原器と呼ぶ。したがって,キログラムは国際キログラム原器の質量に等しい。この定義の採用により,キログラムは水の質量とは無関係になった(4℃の水1dm3の質量は実験で求めるべきものとなり,現在までに得られた最も精密な値は0.999972kgである)。
なお,国際単位系ではキログラムは名称に接頭語がついた形で基本単位になっており,その倍量単位,分量単位の名称はグラム(g)に接頭語をつけて形成することになっている。例えば10⁻6kgは1マイクロキログラムではなく,1ミリグラム(mg)である。
執筆者:三宅 史
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(今井秀孝 独立行政法人産業技術総合研究所研究顧問 / 2008年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…1杯のコーヒーの〈杯〉,12人の弟子の〈人〉も同類である。では,長さ3mの鉄棒の〈メートル〉,質量2kgの金塊の〈キログラム〉も同類であろうか。 これまでにあげた表現用語のうち,メートルとキログラムは,比率や件数,個数を表すことばとはやや違った機能をもっており,他の多数の類語(平方メートル,アンペア,パスカル,アンペア毎平方メートル,キロメートル,エレなど)とともに単位と呼ばれる。…
※「キログラム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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