ギラン・バレー症候群(読み)ぎらんばれーしょうこうぐん(英語表記)Guillain-Barré syndrome

  • (子どもの病気)
  • (脳・神経・筋の病気)
  • ギラン・バレーしょうこうぐん

知恵蔵の解説

筋肉を動かす運動神経の障害により急性の運動麻痺(まひ)を起こし、手足に力が入らなくなる病気。約7割が風邪などの呼吸器感染、または下痢などの消化器感染のあと1~2週間で発症しており、これらの病原体に対する抗体が自己の末梢(まっしょう)神経を攻撃することにより起こる自己免疫疾患と考えられている。また、ごくまれではあるが、インフルエンザワクチンやインターフェロン製剤、抗がん剤などの薬剤が原因で発症することもある。
年間で人口10万人に1~2人がかかるとされている難病で、国が難病対策の対象として指定する特定疾患130疾患のうちの1つ。ただし、医療費助成対象の45疾患には含まれていない(2009年8月1日現在)。
手足に力が入らないという症状以外に、手足のしびれを訴えることも多い。その他、顔面の筋肉や眼球を動かす筋肉の麻痺、ろれつが回らない、食事が飲み込みにくいなどの症状がみられることもある。症状のピークには、自律神経が障害されたり、呼吸筋が麻痺し、呼吸困難に陥ることもある。発症から1カ月以内にピークとなり、その後は徐々に回復し半年から1年でほぼ完治するとされているが、約2割で何らかの後遺症が残り、死亡例も約5%の割合で報告されている。免疫グロブリン静注療法、血液浄化療法等による入院治療がとられる他、ピーク時には、人工呼吸器が必要になる場合もある。また、回復期にはリハビリテーションが行われる。
09年8月に亡くなった女優の大原麗子さんが、長年、ギラン・バレー症候群を患い闘病生活を送っていたことが報道された他、女優の釈由美子さん、俳優の力也(安岡)さん、一説によると劇画の主人公であるゴルゴ13(デューク東郷)も同疾患を患っていたとされている。

(小林千佳子 フリーライター / 2009年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

六訂版 家庭医学大全科の解説

どんな病気か

 フランスのギランとバレーらが1916年に報告したもので、かぜや下痢の前駆症状があったあとに両側の足の軽い知覚障害から運動麻痺へ進行し、腱反射(けんはんしゃ)消失、髄液(ずいえき)の蛋白増加を示す病気です。幼児や学童に多くみられます。

原因は何か

 細菌やウイルスの感染によって末梢神経の髄鞘(ずいしょう)(神経線維を包み神経伝導に重要な膜)や軸索(じくさく)(神経線維)に対する抗体が作られ、自己免疫反応が起きて発病すると推測されています。組織像では末梢神経の髄鞘が壊れ、炎症細胞が増えています。

症状の現れ方

 感染症状が出た約10日後に両側の足の知覚障害(痛みやしびれ)が現れ、まもなく運動麻痺(筋力低下)を来します。この範囲は足からももへと上行し、時に胴体へ及ぶと呼吸筋が麻痺し、脳神経へ達すると発音、嚥下(えんげ)、表情、眼の動きにも障害が現れます。また、自律神経系が侵されると高血圧や低血圧、頻脈(ひんみゃく)徐脈(じょみゃく)、顔面紅潮、発汗が突発的に現れます。

検査と診断

 症状と髄液検査(蛋白増加、細胞数正常)で診断します。神経伝導速度の測定も診断や予後の判定に役立ちます。

治療の方法

 入院が必要です。免疫グロブリン療法や血漿交換療法は病気の期間を短縮し、後遺症を軽くするのに有効です。呼吸筋麻痺がある時は人工呼吸器を使用します。

 病気の進行は4週以内に止まり、運動麻痺は進行の方向とは逆向きで改善し始め、3~6カ月以内に大部分が回復します。

病気に気づいたらどうする

 足の痛みやしびれを訴える時は、小児科を受診してください。

千田 勝一

どんな病気か

 急速に発症する左右対称性の四肢筋力の低下と(けん)反射の消失を主徴とする病気です。人口10万人あたり年間1~2人の発症数であり、年齢別にみると若年成人と高齢者に発症のピークがあります。

原因は何か

 発症の1~3週間前に(せき)や発熱、咽頭痛(いんとうつう)、頭痛、下痢などの感冒(感染)症状があることが多いので、各種ウイルスや細菌による感染が引き金となり、自己免疫的機序(仕組み)を介して発症する病気と考えられています。

 神経細胞には軸索(じくさく)と呼ばれる長い枝の部分がありますが、この病気では主に軸索のまわりを取り囲む髄鞘(ずいしょう)という部分に障害が出ます。髄鞘の障害には感染の結果できた自己抗体が関与すると考えられています。

症状の現れ方

 感冒症状や下痢のあと1~3週間して比較的急速に四肢の筋力低下が現れますが、通常は2~4週間目でピークに達し、進行は停止します。進行停止後は徐々に快方に向かい、3~6カ月でほぼ完全に治りますが、10~20%の患者さんでは後遺症を残します。運動障害に比べて、感覚障害は軽いのが特徴です。

 顔面の筋力低下も約50%の患者さんでみられます。舌や嚥下筋の支配神経に障害が出て、しゃべりにくい、飲み込みにくいなどの症状が現れることや、外眼筋支配神経(がいがんきんしはいしんけい)に障害が出て複視(ふくし)(物が2つに見える)が起こることもあります。呼吸筋の麻痺は10~20%の患者さんで起こります。また、頻脈(ひんみゃく)やそのほかの不整脈、起立性低血圧、高血圧など自律神経が損なわれた症状が現れることもあります。

 症状の回復が不良な患者さんとしては、①年齢が60歳以上、②キャンピロバクター・ジェジュニ(細菌の一種)の先行感染がある、③口咽頭筋麻痺(こういんとうきんまひ)がある、④人工呼吸器が必要である、⑤電気生理学的に軸索障害の所見あるいは複合筋活動電位振幅の消失がある、⑥発症から治療開始までに2週間以上を経過した、などがあげられます。

検査と診断

 髄液(ずいえき)検査を行うと、発症から1週目を過ぎると蛋白量が上昇します。この場合、髄膜炎(ずいまくえん)のように髄液の細胞数が同時に増えることはなく、この蛋白と細胞の所見が解離することがこの病気の特徴です。また筋電図検査や末梢神経伝導検査を行うと、神経伝導速度の遅延などの異常がみられます。

治療の方法

 免疫グロブリンの大量静注療法、または血漿(けっしょう)交換療法が有効な治療法です。免疫グロブリン大量静注療法は400㎎/㎏の用量で5日間行います。血漿交換療法の回数は症状の程度によって異なりますが、5m以上歩ける軽症例では隔日で2回、自分で立てない中等度例や人工呼吸器を装着されている重症例では隔日で4回くらい行います。これらの治療と並行して、筋力回復のためのリハビリテーションを行うことも重要です。

吉井 文均

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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